今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

第八章 今度こそ絶対逃げ切ってやる

貴族を辞めました

　公爵様と別れた私たちは、そのまま大神殿へと向かった。といっても、カインの転移魔法で移動したんだけどね。

　行く前に「王女様とのお別れはよろしいのですか？」って訊いたら、心底嫌な顔をされたわ。私が公爵様と決別したように、何か言うことがあったらなって思ったんだけどね。いらないお世話だったみたい。

「一緒の部屋にいるのも嫌だ」だって。

　ここまで嫌われるって、よほどだよね。まぁ私から見たら、王女様ってカインがもっとも嫌いなタイプだからね。王女様はカインのことが好きだったかもしれないけど、男をアクセサリーとして見てるところが顕著に出てたからね。そして、やたら煩かった。好ましい箇所が全くないんだから、しょうがないよね。

　不思議に思うんだけど、なんで、王女様は好きな男のタイプを調べなかったのかな。調べていたら、結果は同じでも、対処の仕方が変わっていたのに。ほんと、甘やかされてるっていうか……よほど、自分に自信があったようね。馬鹿だわ。

　でもまぁ、感謝はしてるのよ。

　貴族を辞める理由を作ってくれたんだから。正確に言えば、後押しかな。

「後悔はなさりませんね」

　大聖女様が覚悟があるか訊いてきた。どうやら、大聖女様自ら受け付けてくれるらしい。それは助かるわ。無駄な手間が省けるからね。サクサクと進むわ。

「しませんわ」

「俺もだ」

　私とカインは即答する。

「ならば、受理いたしましょう」

　これで終わり。ほんと、呆気ないものよね。でもこれで、私は自由になれる。どこにでもいける。なんの柵しがらみもない。

「「ありがとうございます」」

　私とカインは深々と頭を下げた。横暴な面があるカインもね。

「それで、王家とグリード公爵家には、正式に教会は受理したと伝えればよろしいのですね」

　マジで驚くわ。大聖女様って話がわかるのよね。下手な説明いらないもの。

「ああ、それで頼む」

　国王陛下は絶対に、書類を戻すように圧力を掛けてくるでしょうね、十中八九。グリード公爵家はわかんないけど。理由は……そうね、書類の不備とかでかな。さすがに脅されましたとは言えないしね。王家にも、それなりのプライドがあるから。

「文句を言ってきても、書類に不備はなかった。本人の意思も確認した、で通します。事実ですから」

　本当に頼もしいよ。

「そうですね。大神殿は淡々と仕事をこなしただけですから」

　実際、そうだし。

「もし、例の王女が乗り込んできても、力ずくでお引取り願いますから、その点もご安心ください」

　にっこりと微笑む大聖女様は、とても綺麗だったよ。カインもニヤリと笑ってるし、似たところがあるんだよね……この二人。そして、そうできるだけの実力もある。大国である隣国相手でもね。

　味方でよかったわ。敵なら、これほど厄介な相手はいないでしょうね。

「ありがとうございます、大聖女様。それでは、私はもう行きますね」

　長いは無用。ほとぼりが冷めたら、こっそりと来ようかな。

「俺も行く」
　
　私が一礼し退室しようとしたら、カインも当然のように追い掛けて来た。

「なにか問題があれば、創世神様経由で連絡くださいね」

　そんな問題起きないほうがいいけどね。まぁ念のためかな。

「畏まりました」

　私たちは大聖女様の返答に軽く頷くと、その場をあとにした。

　もちろん帰る場所は魔国だよ。

　仕事、投げ出したままだからね。






☆☆☆

　最後まで読んで頂きありがとうございます。

　読んで頂けるだけで、とても嬉しいです。創作の栄養剤ですね。

　ご存知の方も多いと思いますが、実は〈第一回きずな児童書大賞〉に参加しています。

　タイトルは【こうなったら、頑張るしかないでしょ～両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ～】です。

　初の児童書ですね。

　これからも頑張って書いていきますので、読んで頂けると嬉しいです。