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第八章 今度こそ絶対逃げ切ってやる
まずは貴族社会から
しおりを挟む「頭は冷えましたか? カイン殿下、神獣様」
くどくど言うよりも、冷たい視線で、言葉数少なく淡々と意見する方が二人には効くからね。たまに思うわ。根本的なところ、似てるんじゃないかって。
「……悪かった、すまぬ」
「…………」
カイン殿下と神獣様は罰の悪そうな顔をしながらも、殺気を抑えてくれた。動けるようになった近衛騎士たちが、フラフラしながらも一礼し出て行った。とんだ災難よね……あっでも、ある意味訓練にはなったのかな。だとしたらいいけど。ご苦労様。
根本的なところが似てても、神獣様はちゃんと謝れるのに、カイン殿下はそっぽを向いて謝らない。謝ることが負けだって思ってるのかしら。だったら、子供よね。全くもう……
はぁ~と溜め息を吐きながら、私は言い放つ。
「根本的なところが似てても、素直に謝れる人は好感がもてますよね」
すると途端に、「すまなかった」と謝るカイン殿下。
人に指摘されて謝るのはどうかと思うけど、次から気を付ければいいわ。平民になるなら尚更ね。神獣様の前だけだと思わなくもないけど……それはそれで、問題だよね。一応、不敬罪になるわけだし。神獣様がその件に神罰をくださないなら、私が注意することじゃないけど。
「頭が冷えたのなら、着替えてきてくださいな。国王陛下と王妃殿下に謁見を申し込むのでしょう」
私をここに連れて来た時点で、カイン殿下が何を狙ってるか理解できた。カイン殿下はニヤリと笑う。
まぁ簡単に言えば、一番偉い人に認めてもらおう作戦だ。
上手くいけば、万事OK。お父様の説得時間がかなり短縮できる。事後承諾も可だよね。それは、今からの話し合いで決まるけどね。大丈夫。私とカイン殿下ならね。なんせ、糞女神を屠ったんだから。怖いものはない。
「謁見なら申し込んでいる。今から行くぞ」
さすがカイン殿下、抜かりがないわね。
「ここまで来て今更だけど、カイン殿下、本気だったのですね」
「ほんとに今更だな」
カイン殿下が苦笑する。自然と、私も声を出して笑ってしまった。
「……どうしたのですか?」
思わず訊いてしまったよ。硬まってるカイン殿下って、なかなか見ないから。っていうか、なんで顔や耳が赤いの?
「いや……別になんでもない!!」
そう怒鳴ると、カイン殿下は足を速めた。止まる気配も振り返りもしない。相変わらずよね。
「ちょっと、待ってください」
私は苦笑すると、カイン殿下を追い掛けた。その後を、神獣様が追い掛ける。
「……我も頑張ればならぬな」
あまりにも小さな声だったので、神獣様が何を言ったのか聞き取れなかった。
そうこうしているうちに、謁見の間に到着する。
扉の脇で控えている近衛騎士が、私たちの到着したことを告げた。そして、扉が開く。
ここが正念場。
まずは、貴族社会から逃げてやる!!
☆☆☆
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
いよいよ、最終章に突入しました。ここまで、本当に長かったですね。
それはさておき、実は新作を公開してます。人生初の児童書です。
タイトルは【こうなったら、頑張るしかないでしょ】です。
両親大好きっ子平民聖女様と白いモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ、ここに開幕です。
気楽に読めますので、時間があれば是非。
これからも一生懸命書いていきますので、応援宜しくお願い致します。
応援ありがとうございます!
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