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第七章 痺れを切らした婚約者が襲来しました
なかなか良い性格してますね、大聖女様
しおりを挟む「よく、御越しいただきました。皆様、お元気そうでなりよりです」
深々と大聖女様が頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとうございます。長い間、私の身体を清め護っていただき、重ねてありがとうございます」
さっきのカイン殿下の告白に私は動揺したけど、さすがに大聖女様の前では、その気持ちを圧し殺し礼を述べた。だって、第三者の前で醜態を晒すわけにはいかないもの。
「いえ、それが私の仕事であり役割です。それを別にしても、貴女様には感謝しかありません」
とても良い笑顔で、大聖女様は答える。その笑顔がメチャクチャ怖いよ。心底、糞女神の存在が邪魔だったみたいね。
「では、さっそく返していただきたいのですが」
あまり長居したくない私は要件を口にする。カイン殿下も神獣様も黙って控えていた。
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
そう告げると、大聖女様は部屋の奥にある壁に手をかざした。すると、壁に魔法陣が浮かぶ。そして、消えた。
特定の人物しか入れないようになってるってわけね。かなり高難度の魔法だわ。さすがに、転移魔法のような古代魔法の習得は無理でも、この魔法なら習得できるかな? なにかと重宝しそう。大事なものを保管したり、襲撃された時の逃げ場に最適よね。
そんなことを考えながら、私は大聖女の後をついて行く。
長い螺旋階段を降りた先には、拓けた空間があった。そこには私の身体はなくて、その奥にあるみたい。
ヒンヤリとした空気が私を包み込む。まるで、川辺に来たみたいな感じ。とても空気が澄んでいて、身体が軽くなった気がする。力が漲るって感じかな。すっごく、心地良い。
「良い神気だ」
神獣様がポツリと言った。
神気って言われても、いまいちピンとはこないけど、神獣様の言いたいことは理解できるわ。ゼリアス様と対話した時も感じたもの。
「そうですね、とても心地良いです」
私の返答に、大聖女様は満足気に微笑む。さっきの笑顔のような怖さは微塵も感じない。
「マリエール様、身体はこの奥にあります」
私は皆と一緒に奥へと向かった。
水辺っていうのは間違ってはいなかったみたい。自然にできたような池が目の前にある。神気が濃い。神域ってやつね。
「水は全ての命の根本だからな」
神獣様が教えてくれた。なるほどね。
どうやら私の身体は、この池の底にあるみたい。さて、どうやって引き上げようか。それとも、直接潜る。私、泳ぎ得意じゃ無いんだよね……どうしよう? そもそも、入っていいのかな?
「大丈夫ですよ。もうすぐ、浮かんで来ますよ。そうですよね、カイン殿下」
大聖女様はクスッと笑いながら答える。それと比べて、カイン殿下は少し罰の悪そうな顔をしていた。
「……あの……さっきから、気になることがあるのですが、なぜここに机が?」
神域に机って……場違いにもほどがあるわ。罰当たりでしょ。嫌でも目に入るって。
「それは、カイン殿下にお訊きください」
……マジですか。
ここで、王太子としての仕事をこなしていたってことよね。重い、重過ぎるわ。でも、ちょっと嬉しい。なんでだろ?
「浮き上がるのに、何分ほど掛かります?」
ここはスルー一択で。深く突っ込むと、私まで飛び火しそうだから。
「もうすぐですよ」
やけに良い笑顔で、大聖女様は答えた。大聖女様もなかなか良い性格してるよね。
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