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第七章 痺れを切らした婚約者が襲来しました
私の我が儘のせいなの
しおりを挟むというわけで、大神殿にやって来ました。
カイン殿下と一緒に。ちなみに神獣様は、姿を消して私の隣にいるよ。
まさか、普通にドアの外で待ってるとは思わなかったよ。ドア開けてビックリしたんだから。っていうか、警備と護衛何してるのよ。全く、機能してないじゃない。せめて、少しは抵抗しようよ。突破されるとわかっててもね。
なんて考えていたら、一瞬で来れちゃいました。さすが人外レベル。今では解読不可能な古代魔法を習得していらっしゃいました。ほんと、凄いね~(棒読み)。薄々、気付いてたけど。
それにしても、一人で行動するって決めた矢先にこれって……心情的なら、さっと行って、さっと帰って来たかったけど。できれば、王家とグリード公爵家の人たちには見付かりたくなかったからね。いつまでも逃げてちゃいけないってわかってはいるんだけどね。
カイン殿下との婚約の件。
未来の王太子妃としての役目。
学習はすでに終了しているけど、外交とか内政とか、私は全て放棄しているからね。すっごく、宙ぶらりんな状態だってわかってはいるのよ。無責任だって。
今、私が楽しく感じてる状況は、大人たちの理解があってのこと。いつまでも、それを許してくれるとは思えない。
呪いが解けるのが、もっと先なら……なんて、考えてしまう自分が嫌になるわ。だからといって、知らない振りなんてできないし、大聖女様にも迷惑を掛けるって考えると、身体を回収に行くのを止めるわけにいかないよね。そんなことを考えていたら、
「痛っ!? 何するんですか!?」
カイン殿下に頭を軽く小突かれた。
痛くはなかったけど、うだうだと考えていた思考を止めることはできたみたい。
「眉間に皺が寄ってるぞ……なぁ、マリエール、深く考えなくていいからな」
私の気持ちを軽くしようとしてくれる、なにげに優しいんだよね、カイン殿下って。ヤンデレで人外だけど。
「…………甘やかし過ぎです。カイン殿下も神獣様も」
「そこで、犬のことを出すな」
やや不機嫌になるカイン殿下。
「ほんと、不敬罪ですよ。神獣様は犬ではありません。狼です」
「俺から見たら、でっかい、犬だがな」
『なら、お前はただの痛い野郎だな』
カイン殿下の悪口に反応する神獣様。さすがに声には出せないので、念話で答える。何回か念話で話したことあるけど、頭の中で直接声がするのって、違和感があって慣れないんだよね。
「喧嘩は止めてください。目立ちたくないので」
軽く注意しておく。当然、小声で。
そんな話しをしていると、大聖女が待つ部屋の扉の前までやって来た。すぐに扉をノックすると思ったら、カイン殿下は私の顔を見て言った。
「自分の生きたいように生きればいい。無理に王太子妃にならなくていい」
はっきりと言われた。
王太子妃にならなくていい……それは、カイン殿下を選ばなくていいってこと? じゃあ、今までのは何なのよ!?
困惑と怒りとショックで黙り込んだ私に、カイン殿下は言葉を続ける。
「俺も無理に国王になりたくはないしな」
「…………えっ!?」
さらなるとんだ爆弾発言に、私は言葉に詰まる。神獣様は薄々察していたのか、何も言わずに聞いていた。
「まだ、父上も母上も若いし、じゅうぶん子供もつくれるしな。それに、王家の血を引くものならいるし、必ずしも俺じゃなければならないってことはない」
「……何言ってるのですか!? 正気ですか!?」
カイン殿下が国王にならないなんて、間違ってる!! 一生懸命勉強していたじゃない。私はその後ろ姿をずっと見てきた。
いつも、国のことを考えてたじゃない!!
「正気だよ。ずっと考えていた。国を支えるのは、俺だけじゃない。大勢の人の手によって支えられている。俺やマリエールが抜けても、国が傾くことはないよ。それに、じっと机にへばり付いているのは、考えていた以上にストレスが溜まるんだ。ハンターをやっている方が気楽でいい」
そう告げると、カイン殿下は扉をノックし開けた。先に入室するカイン殿下の背中を見詰める。
そんなことを言い出すなんて、私の我が儘のせいなの。
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