今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

第六章 友人からお使いを頼まれました

魔族ってよくわからない

　ちゃっちゃとやっちゃいました。

　野盗の皆さんの山が全部で四つできたよ。

　手応え全くなし。遊びにもならなかったよ、ほんと。暇潰し以前かな。もうちょっと、粘ろうよ。文句を言っても仕方ないんだけどさ。

「ただいま帰りました」

　不完全燃焼のまま荷馬車に戻ると、フリードさんが温かい紅茶を淹れてくれた。神獣様とライさんたちは遊びに行っているからここにはいない。

「野盗はどうしました？」

「一応、結界内に閉じ込めてますが、どうしましょう？」

　魔国じゃなかったら、ハンター協会に通告。そのまま回収してもらうんどけどね。

「安心してください。魔鳩を飛ばしてますから、回収してくれますよ」

　さすがフリードさん、私が頼む前に手を打ってくれてたみたい。

「ありがとうございます、フリードさん。紅茶、とても美味しいです」

「お口にあってよかったです」

　ニコッとフリードさんは微笑む。

　こうして改めて見ると、やっぱり、エルフって美形よね。長命種だから、実際の年齢はわかんないけど。

　プライドが高くて、底意地の悪い、馬鹿なエルフしか見てこなかったせいか、さほど美形とは思わなかったんだよね。ほんと、内面って大事よね。フリードさん見てて、心底そう思うわ。

「どうしました？」

　あまりにも、ジッと見過ぎていたからか、フリードさんが尋ねてきた。

「……フリードさん見てて、内面は大事だなって」

　それだけで、伝わったみたい。

　フリードさんは苦笑しながら言った。

「あぁ……アイツらは、一際痛かったので……」

　ほんと、痛かったよね。突き抜けてるっていうか、まぁ総合的に、痛いしか表現のしようがなかったよね。同じエルフでもそう思うんだから、相当だったようね。一緒にされたくないって感じかな。

「そうですね。でも、種族に関係なく、痛い輩はどの種族にもいますから、気にしないでください。……それで、フリードさん、お訊きしたいんですが、この魔国にもハンターギルドのような組織はあるんですか？」

　強引に話題転換したわ。まぁ、以前から気にはなっていたからね。

「ありますよ、それなりに。ハンターではなく冒険者と呼んでますが」

　へぇ～あるんだ。

「じゃあ、あの野盗たちは彼らが回収を？」

「はい」

　役割って、どこも似たりよったりなんだね。

「報酬はありますか？」

　ハンターギルドからは野盗討伐の報酬は出てたからね。それなりに。

「冒険者ギルドに登録してますか？」

「してません」

　してたら、そもそも訊かない。

「なら、報酬は登録している人たちの十分の一ですね。一応、マリエールさんの名前で送ってますので、後日、冒険者ギルドに行って報酬を貰ってください。その時に登録したらどうですか？」

　そうだよね。それが一番無難だよね。でも……

「人族が登録できるんですか？」

「種族関係なくできますよ」

　ニコッと微笑みながら、フリードさんは言った。

「えっ!?　人族って、魔族からみたら敵ですよね」

　ここにいる自分が言うのもなんだけどさ。勇者と魔族が戦争したのは、魔族から見て、そう昔の出来事じゃないよね。

「そういうところ、魔族って、おおらかだから」

「いやいや、おおらかって……」

　違うでしょ。ほんと、魔族ってよくわからないわ……