304 / 354
第六章 友人からお使いを頼まれました
遊びましょうか
しおりを挟む休憩のため、道から少し逸れた大木の下に荷馬車を停めた。
危険じゃないかって?
普通は危険よね。狙ってくださいって言ってるようなものだもの。でもね、その点は大丈夫。だって、旅しているメンツがメンツだからね、まず大丈夫でしょ。
でもまぁ念のために、結界は張っておくけどね。馬が殺られたら困るから。今度は神獣様ではなく私がね。
「マリエール」
私とフリードさんでお茶の準備をしていたら、神獣様が私を呼んだ。
振り返ると、神獣様の後ろにジョルジュさんとライさんが仲良く並んでいた。若干、顔色が悪く口元引き攣ってるけど。
「どうかしましたか? 神獣様」
「少しばかり、この二人と遊んで来るぞ。お茶の時間には戻る」
ジョルジュさんとライさん、よほど神獣様に気に入られたのね。また神獣様の手解きを受けれるなんて、すっごく羨ましい。
「わかりました、神獣様。それなら、私は少しだけ別の方と遊びますわ」
にっこりと微笑みながら答える。神獣様と遊べない分、彼らと遊んでもらいましょう。
「別の方?」
側にいたフリードさんが警戒心を含んだ声で尋ねる。
「この荷馬車、狙われてますからね。さっきから、こちらを監視している輩がいますよ。あっ!? 取り囲まれたみたい。大丈夫ですよ、フリードさん。奴らはこの結界内には入れませんから」
ちなみに、結界内の会話は外にはもれないから密談し放題。
野盗が狙っていると知って、フリードさんが少しビクッとしたけど、入れないっていう私の言葉で直ぐに安堵の表情を見せた。信じてくれて嬉しい。だけど、その仕草に私は少し首を傾げてしまう。
フリードさん、そこそこ強いって思うんだけどな……できるってこと、隠しておきたいのかな? だとしたら、尋ねるわけにはいかないよね。私と二人っきりじゃないし。私は空気が読める子だから、ちゃんと配慮はするよ。
遊び相手が野盗だと勘付いたジョルジュさんとライさんが、すっごく行きたそうにしてるけど駄目ですよ。私の遊び相手を奪わないでください。それに、二人は神獣様のお相手しないと。ほら、神獣様に睨まれてるわよ。あっ、大人しくなった。それで良し。
「いらん緊張と筋肉を使ったしな、体を解すにはちょうど良いだろう」
確かに、慣れない御者をしたからね。
「ですよね。許可もいただきましたから、少し遊んで来ますわ」
ルンルン気分で言った。
「やり過ぎるでないぞ」
神獣様に釘を刺されたわ。しょうがないわね。
「ご安心ください、神獣様。軽く遊んでくるだけですから。冷めたお茶飲みたくありませんし」
「うむ。では、遊んでおいで」
「はい。行って来ます」
私は元気よく、結界の外に出た。
あ~~いるいる。商品の姿を見失って慌ててるわ。円形を崩しちゃって馬鹿みたい。
私は手近にあった大木の幹から、慌てる野盗の姿を見下ろしていた。
どう、遊ぼうかな?
一箇所に皆を集めて一緒で遊ぶか、一人一人、もしくは少人数で遊んでいくか……う~ん、どうしよう。迷う。
周囲を見渡してみる。
あ~ないわね。
皆で遊べる空き地が近くにないので、今回は少人数で遊ぶことにしたわ。
なら、手始めは、下で騒いでいるこの人たちからね。私は音を立てずに、彼らの背後に降り立った。
あまりにも生臭くて、鼻を摘みながら、私は彼らの首に手刀を叩き込んだ。
崩れる男たち。
私は男の襟首を掴むと、近くの草むらにかためて転がした。気を失っている間に魔物に殺られたら可哀想だから、ちゃんと結界を張ってあげたわよ。偉いでしょ。
じゃあ、あと十三人、ちゃっちゃとやっちゃいますか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,413
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる