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第六章 友人からお使いを頼まれました
どこかで聞いた台詞だわ
しおりを挟む勝者は勿論、神獣様でした。
圧勝でしたね。意外と隊長さん、いえ、ジョルジュさんのことを気に入ってたみたい。神獣様が鍛錬に付き合ってくれるのなんて、ほんと珍しいもの。いいなぁ~羨ましい。
ジョルジュさんは虫の息で、地面に倒れてピクリとも動かないけどね。
ライさんとフリードさんは、神獣様の強さに圧巻。若干青い顔で、口元がピクピクしている。
だよね、だよね。神獣様はとても強くて凄いんだから。さすが、神獣様。
それにしても、ジョルジュさん、本当に動かないわね。近くに棒があったので突いてみる。うん。ピクリと動いたから、生きてるね。深手はおってないから、治癒魔法はいらないかな? でも、念のために掛けとこうかな。
「その必要はない。気を失ってるだけだ」
神獣様に止められた。
「は~い。わかりました」
私はそう答えると、ジョルジュさんを仰向けにし、上半身を起こすと肩に担いだ。強化魔法を掛けてるから大丈夫。
「なっ!? 何をしているんだ!?」
神獣様がやけに焦っている。
なんで?
「荷馬車まで運ぶつもりだけど」
「そのまま、ここに放置すればよいだろ」
「いやいや、さすがにそれはできませんよ、神獣様。魔王様にもよろしくと言われてますしね」
運ぶっていっても、小柄な私だから、胃に肩が食い込むけどね。腕も足先もギリ付かないくらいかな。ちょっとズレたら、どっちかが地面に擦れちゃう。まぁ、気を失ってるからいいかな。小さい傷は後で治癒魔法掛ければいいし。
「もったいない。それに、すぐ治る」
また、神獣様は私の考えを勝手に読む。いまさらなので、文句は言わないけど、
「まぁ、確かに、獣人は傷の治りが早いって聞きますが」
「そうだ。だから、そんな小さな傷で治癒魔法は不要だ」
だそうです。でもまぁ、私が作ってしまったものだし、なのでさりげに掛けた。文句を言っても、掛けちゃったものは戻せないからね。それにしても、
「フリードさんが機転をきかせてくれてよかったです。ジョルジュさんを担いで町中を歩くのは、さすがに目立ちますからね」
私も、まさか獣人さんを担ぎ上げることになるとは思わなかったよ。
「よいしょっと」
荷馬車にジョルジュさんを下ろすと、奥に押しやった。
「おい!! マリエール!! お前、凄いな!! 魔力操作完璧じゃねーか。それに、無唱和って!!」
興奮して、詰め寄ってくるライさん。
近いって。神獣様が唸ってるよ。
背後が荷馬車だから逃げ場がない。ニコさんもライさんは魔法馬鹿な面があるって言ってたから、気持ちわかるけど。
「練習しましたから」
謙遜なんてしないわよ。だって、とてもとても頑張ったんだから。生き残るために、必死だった。無唱和は、唱和しているうちに殺られるから、自然と短くなっただけ。
「本当に、凄いぞ!! 一回、俺と手合わせしないか!? 周りに結界張ってれば大丈夫だろ!?」
それ、どこかで聞いた台詞だわ。
マジか……失敗したわ。脳筋と魔法馬鹿は同じだって知ったよ。どっちも隊長クラス。うるさい道中になるわね、絶対。頭痛くなってきたわ……。
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