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第六章 友人からお使いを頼まれました
相性が悪いのかな
しおりを挟む地図を持っているのは、フリードさん。この中で、一番頭がよくてしっかりしてそうだからね。絶対にライさんには渡せないわ。速効、燃やされそう。
フリードさんが御者をしてくれてるので、私はその隣に座る。風が気持ちいい。特等席だよね。神獣様とライさんは荷馬車の中だよ。
「神獣様、ほら、見てください。とても綺麗ですね」
体半分、後ろに向けてから神獣様に話し掛ける。神獣様は無言のまま、私を上目使いでジロリと見て、そのまま寝てしまった。
さっきから、神獣様の機嫌が凄く悪いのよね……私、何か気の触ることした?
「フリード、この先に村があるんだけど寄れねーか? 痛っ!!」
空気を読むことを全くしないライさんが、御者席に顔を出して訊いてきた。自然と私と距離が近くなるが、悲鳴を上げてすぐに引っ込んだ。
「どうしたんですか!?」
荷馬車の中を覗き込むと、足首を押さえて転がっているライさんがいた。
もしかして、噛んだの?
神獣様はプイッとそっぽを向いている。
だから、なんで?
「気にすることないですよ、マリエールさん。空気を読めない、ライが悪いんですから」
そう言われてもね……まぁ、血は出てないから、牙は立ててないよね。一応、甘噛みになるのかな? 青タンできると思うけど。
「さっきから、神獣様おかしいですよ。もしかして、調査に行きたくなかったのですか? なら、もっと早く言ってください。ライさんに当たるのは間違ってますよ」
私がそう言うと、神獣様は軽く唸ってから溜め息を吐きふて寝してしまった。
私は荷台に移り、ライさんの足首に回復魔法を掛けようとしたら、神獣様の前足が私の両肩に。嬉しいけど、重い。
「いや……苦労してますね……神獣様」
ポツリと呟くフリードさん。ピクリと神獣様の耳が動く。
「フリードさん、何か言いました?」
よく聞き取れなかったので訊き返した。
「その村に何があるんです? ライ」
ああ、村のことを訊いてたのね。
「そこ、乳製品で有名なんだよ。昼ご飯、そこで食べないか? ありがとな、マリエール。ヒッ!!」
ニカッと笑っていた笑顔が、途端に引きつる。横を向いたら、いつもの神獣様。
もしかして神獣様、ライさんに牙を剥いてた? 確かに空気読めないライさんだけど、人は悪くないでしょ。なんで、そこまで敵対するのかな? 相性が悪いのかな? まぁ、それは追々改善されるよね。それよりも、
「乳製品で有名なんですか? なら、絶対に寄らないといけませんね」
「乳製品大丈夫なのか?」
ライさんが恐る恐る訊いてきた。そこまで怖がらなくてもいいじゃない。
「乳製品が駄目な人っているんですか!? 大好物ですよ。バターたっぷりの芋料理。トロリと溶けたチーズパン。野菜や肉と溶けたチーズ相性は抜群!! グラタンも最高です!!」
気を抜いたら、涎がでちゃう。
「だよな!!」
ライさんが子供っぽい笑顔で笑う。
「わかりました。昼はその村でとりましょう」
苦笑しながら、フリードさんが言った。
ヤッターと喜ぶ、私とライさん。うん、ライさんとは仲良くなれそう。
ところで、そろそろ私の両肩から退いてくれませんかね、神獣様。さすがに、重いって。
「嫌だ。退いて欲しければ、我を撫でろ」
神獣様から言ってくるなんて珍しい。
「撫でていいんですか!! 私にとって褒美ですよ、それ。ついでに、ブラッシングもしていいですか?」
嬉々として櫛を取り出す私に、ライさんは口元がピクピクと引きつっていた。
だから、何で?
☆☆☆
最後まで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
実は、こっそりと、【第5回ほっこり・じんわり大賞】に参加しています。
異世界ものではなくて、現代もの。初のライト文芸です。
タイトルは、【俺は妹が見ていた世界を見ることはできない】です。
時間があれば、読んで貰えると嬉しいです。
これからも頑張って書いて行きますね。
応援ありがとうございます!
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