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第六章 友人からお使いを頼まれました

出発の前のお約束

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 とうとう出発の日がやって来ました。でーー

「何故、貴方様がいらっしゃるのでしょうか?」

 思わず、口元を引き攣らせながら尋ねる。

「こう見えても、ライは薬草に詳しいんですよ。学者並みに」

 見送りに来てくれたニコさんが代わりに答えてくれた。

「っていうか、お前!! やっぱり、光魔草持ってたんじゃないか!!」

 朝の挨拶もなしにいきなりコレか。さっきの嫌味も通じてないし。マジに彼も同行するの~。エルフの件といい、逃げれない自分が心底恨めしいよ。にしても、ギャンギャンうるさいな。

「おい!? 何か言えよ!! 痛っ!!」

 第二魔術師団長様がニコさんに殴られている。良い音したわね。

「いいか!! マリエールさんは、魔王様の代わりに同行してくれてるんだ!! 無礼なことを言うな!!」

 ガチに叱り付けている。結構本気で殴ったみたい。師団長様、涙目になってるわ。

「持ってましたよ、光魔草。魔国に来る前に、偶然見付けたので。何故、渡さなかったかですか。……渡すわけないじゃないですか。貴方のように魔力回復のポーションを無駄遣いする人に。ましてや、伺う許可も取らずに、ドアからではなく、空間移動で来る常識外れの方に、貴重な光魔草を渡すなんてありえませんわ。そもそも、光魔草の価格を知ってますの? 一房、金貨十五枚ですよ、十五枚。そのお金、どこから出てると思っているんですか? 少なくとも、魔術師の貴方様からではありませんよね」

 にっこりと微笑みながら、私は言い放つ。

 師団長様、真っ青になってるわ。隣で、ニコさんは波目で拍手している。
 
 もう一人は同行者の薬草学者様。ポーションとかの薬品を作っている部所の所長様だよ。薬草園も管理し運営しているから、同行者としては当然の選択よね。その所長様、完全に気配を消し空気化してるわ。

 神獣様は完全に呆れている。

 そんな中、今度は、師団長様が言葉に詰まり無言になった。

「そんなに、技を試したかったら、ご自身でポーションをご用意なさったらどうですか? まさか、市場には流れてないと?」

 この前街に遊びに行った時、並んでるのを見たわ。物凄く高かったけどね。確か……一本、金貨二十五枚だったからハッキリと覚えてる。

「高いだろうが、買えるか!?」

「そんな大声で怒鳴られても、困りますわ。あっ!? まさか、高いから貴重な王宮にあるポーションを私物化したいと……いやはや、第二魔術師団長様が、まさかそんなことを考えてませんよね」

 図星だったようね。唸ってるわ。すっごく、悔しそう。

「お前!! 性格悪いぞ!!」

 そんなに怒鳴らなくても。ええ。自覚してるわよ。

「だから。……いいですか? 第二魔術師団長様。光魔草を買うお金は、どこから出てると思っているんですか? 誰が出してると思っているんですか? 魔王様ですか? それとも、魔国ですか? 違いますよ。そこをよく考えてください。それを考えた上で、まだ、私を責めますか? ニコさんを困らせますか?」

 師団長様は難しい顔で考え込む。

 反対に、ニコさんは感激して涙を流している。所長様は、ふむふむと頷いています。

「…………悪かった。もう、言わない」

 ボソッと悪態を吐くみたいに謝罪する、師団長様。

「ライ!! 君が謝罪するなんて、大人になったな!!」

 ニコさん、貴方、師団長様の保護者ですか……

「あぁ、もう、うるさい!! マリエールと言ったな、俺のことをライと呼べ。様は付けるな。絶対、師団長様なんて呼ぶなよ。気色悪い」

 ニコさんの手を乱暴に払い退けると、師団長様もとい、ライさんは言い放った。

「わかりました。ライさんでいいですか?」

「ライでいい」

「いえ、ライさんで」

 そこは折れませんよ。

「わかった。それでいい」

 渋々、ライさんは認めてくれた。

「じゃあ、話もまとまったことだし、そろそろ出発しましょうか。あっ、俺のことは、フリードでお願いしますね。様はいりません」

 そう告げると、さっきまで空気化していた所長様はフードを外し顔を見せる。

 何で、フードを被ったままかわかったわ……

「彼は話がわかるエルフです。信頼もできます。アイツらとは違いますよ」

 ニコさんが苦笑しながら教えてくれた。

「まぁ、私も、全てのエルフ族が、彼らのような馬鹿とは思っていませんよ。……私はマリエールと言います。呼び捨てで構いません。道中宜しくお願いします。しっかり、護衛しますね、フリードさん」

 私はそう言うと、手を差し出す。一瞬、フリードさんは躊躇ったけど、差し出した手を掴み握手してくれた。

「こちらこそ、宜しくお願いします、マリエールさん」
 
「では、出発しますか。ニコさん、行ってきますね。お土産楽しみにしていてくださいね」

 ニコさんにもらった、手作りお菓子が入った紙袋を抱えながら、私はブンブンと手を振った。

 隣で、「俺には挨拶なしかよ!!」とギャンギャン吠えるライさんは、当然無視してね。






☆☆☆


【第5回ほっこり・じんわり大賞】始まりましたね。

 実は、こっそりと参加してます。

 タイトルは【俺は妹が見ていた世界を見ることはできない】です。

 初のライト文芸。異世界ものではなく、現実世界が舞台になっています。

 奇病におかされた主人公の七年間を描いています。

 これからも頑張って書いていくので、応援宜しくお願い致しますm(_ _)m




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