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第六章 友人からお使いを頼まれました
一旦落ち始めると早いよね
しおりを挟む今日の私は、いつも以上に機嫌が良い。
だって、今日のおやつは、念願のスフレパンケーキ!! それも、蜂蜜プラスメープルシロップ付き。
何があっても、おやつの時間に遅れるわけにはいかないわ。絶対にね。
なので、多少の嫌味を言われても大丈夫。笑って許してあげるわ。面倒事を起こしたくないからね、時間がとられるから。だから、そこまでにしようね。ダークエルフの皆さん。
ニコさんに頼まれて書類を第一魔術団に持って行くと、何故か、解散の原因となった第三魔術団の馬鹿たちがエントランスにいたの。それで、私を見た途端絡んできた。神獣様がいないからなおさらね。朝、魔王様に連れられて、どこかに行ってしまった。ちょっと寂しい。
「どんな、ズルをしたんだ!!」
「恥を知れ!!」
「下等生物が!!」
あ~煩いわね。この前、ボコボコにしてやったのに、まだそんなことをほざいているなんて、成長してないわね。ましてや言ってること、前と変わらないじゃない。頭の中にあるのは、綿なの。
そもそも、どうしてここにコイツらがいるの? 解散になったから、別の魔術団に配属? いやいや、それって駄目でしょう。罰にならないじゃない。マジでそれを許してるのなら、魔王様を舐めた行動よね。少なくとも、第一魔術団の団長さんは道理を知っている人だと思ってたけど、違ったのかな?
心の中で毒吐いていると、痺れが切れた馬鹿たちは怒鳴った。仲良くね。
「「「無視するな!!」」」
するに決まってるでしょ。馬鹿の相手ほど、疲れるものはないんだから。あ~早く、団長さんに繋いでくれないかな……直接渡すように言われてなかったら、さっさと団員さんに渡して帰るのに。あぁ、コイツらには渡さないわよ。
「どこまでも、馬鹿にしやがって!!」
沸点の低いダークエルフの一人が、私に手を伸ばそうとしてきた。
馬鹿ね。気付かないの? それで、よく魔術を生業にしてるわね。貴方たちを見た瞬間、自分に結界を張ったのに。触れたら、雷に打たれるわよ。第三魔術団の元副団長のようになりたいのなら止めないわ。
あ~事務員さんは震えて、可哀相。仕方ないわね、相手をしましょうか。そう考えていたら、
「止めろ!!」
怒号が飛んできた。と同時に、階段を下りて来たのは団長と副団長だった。その後ろを、数人の団員が控えている。
煩い馬鹿トリオが黙ったわ。威圧に耐え切れずに後退ってる。冷や汗タラタラでね。ざまぁみろ。
「お久し振りです、第一魔術団団長様。書類をお持ちしました。確認、お願い致します」
満面な笑みを浮かべながら、私は要件を告げた。
「ああ、わかった。その前に」
そう団長さんが答えると、後ろに控えていた団員さんが、ダークエルフの馬鹿三人を、その場で取り押さえた。たった一人で。
「団長、このゴミどうします?」
ニヤリと笑いながら尋ねる。私に触れようとした馬鹿の背中を踏みながら。
「魔力封じの腕輪を嵌めてから、放り出せ」
魔力封じの腕輪って、まぁ、二度目だし仕方ないか。第三魔術団に入れたくらいには実力あったのにね……今は罪人って……一旦落ち始めると早いわね。
「は~い」
陽気な声で団員さんは答えると、魔力で縛った紐を束ねて持つと引き摺って行く。ゴンとかグエッとか、普段聞かない音をさせながら。
「いいんですか? 団長様。あれ、団員ではないのですか?」
違うと確信しながら尋ねる。
「やめてくれ。あんな馬鹿たちが団員なわけないだろ」
心底嫌そうだ。
「なら、どうしてここに?」
「馬鹿でも。ダークエルフだからな。ゴリ押ししたら入れると考えたんだろうな」
いくら上位種でも無理でしょ。っていうか、矜持はないの。矜持よりは体裁か、マジ最悪。
「……本当に、救いようがない馬鹿ですね。……あぁ、だから第三魔術団があったんですね」
納得だわ。不思議に思ってたのよね。第三魔術団だけダークエルフしかいないから。なるほど、どうでもよい部署だったのね。
「そういうことだ。それで、書類とは?」
あっ、大事なこと忘れてたわ。
「これです」
私は団長に書類を手渡した。
「直ぐに確認する。お菓子を食べながら待っててくれ」
書類を受け取ると、団長は副団長と共に二階に戻る。
お菓子、食べ過ぎないようにしないとね。私にはスフレパンケーキが待っているんだから。
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