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第六章 友人からお使いを頼まれました
本日のおやつ
しおりを挟む今日も、私とニコさんは朝から事務作業に追われてます。
神獣様は窓辺でのんびりと日向ぼっこ中。
毎日ブラッシングしてるから、体毛がキラキラと輝いていて、とっても綺麗。目の保養だわ。和むわ~。肩凝りなんて苦じゃないよ。
それにしても、そろそろ、ニコさん新しい人入れてもいい時期だよね。今のところ二人でこなせてるけど、これから先、どうなるかわからないじゃない。私も、いつここを出て行くかわからないのに。
例の第一部隊と第三魔術団の件があってから、ニコさんに対する皆の目が明らかに変わった。
一目置く者もいれば、やはり、平民だからと前以上に反発をする者も貴族の中にはいる。でもそれは極一部で、大半の貴族は成り行きを見ているのが現状かな。
反対に、平民たちにとって、ニコさんはヒーロー的存在になってるわね。憧れの的ってやつ。熱い目で見ている女子もいるしね。初々しいよね。彼女たちは知ってるのかな? 派手さは全くないどころかマイナスだけど、前髪上げてメガネを取れば、ニコさん、ダークエルフ並に綺麗だってこと。いやぁ~初めて素顔を見た時、私も神獣様も絶句したからね。完璧な変装だわ。
少し話が逸れたけど、今なら、まともな人たちが集まると思うんだよね。それに、魔王様のお墨付きがあるから貴族を落としても構わないし。貴族の子息が嫌なのはわかるけど……とはいえ、平民ばかりってわけにもいかないしね。バランスが難しいよね。でもまぁ、優秀なら、貴族、平民問わないと、ニコさん言ってたし。私もそれには賛成かな。
「……マリエールさん、さっきから、私を見てますが、何か……?」
少し顔を赤らめながら、ニコさんが訊いてきた。
あっ!? 考え事に夢中で、仕事の手が止まってたわ。
「コホン。ニコさん、そろそろ、新しい人入れませんか?」
「ああ、その件ですか。私も考えてはいるんですけどね……なかなか」
苦笑しながら、ニコさんは答える。
「マリエールみたいな優秀な者はいないからな、難しいだろうな」
日向ぼっこをしていた神獣様が、首だけ私たちの方を向け参加する。
「そもそも、マリエールさんレベルはいませんよ、神獣様。……マリエールさん、客人である貴女に甘えてばかりで、本当に申し訳ありません」
ニコさんは持っていた羽ペンを机に起き、私に頭を下げた。
「何言ってるんですか!? 頭を上げてください、ニコさん!! ちゃんと報酬を貰っているんですから、気にしないでください」
慌てて否定したわ。
確かに、金銭的なものはごく僅かしか貰ってないけど、代わりに衣食住とお菓子が無料。お菓子は食べ放題なんだよ。私にとっては最高の待遇だわ。
「しかし……」
真面目で責任感強くて、部下に親身になれる、本当に良い上司だわ。
「楽しいんですよ。自分が身に付けてきたことが活かせるので」
努力して身に付けてきたのを活かせるって、楽しくない? 嬉しくない? 私は、とっても楽しい。満たされてる気がするの。自分の足で立ってる気がしてね。ハンターをしていた時もそう感じたけど。
「なら、いいですが……」
いまいち、納得してなさそうね。
「気になるんでしたら。次のお菓子は、スフレパンケーキにしてくだい」
ニコさんが焼くスフレパンケーキなら、絶対美味しいに決まってるわ。
お店によったら、卵白の匂いが残ってて、あまり美味しくないんだよね。それが良いっていう人もいるけど、私はそれが苦手なんだよね。
「それでいいのなら、いくらでも焼きますよ」
苦笑しながら、ニコさんが言った。私は両手を机に置き、勢いよく立ち上がる。
「本当ですね!?」
私は前のめりになりながら尋ねる。
「本当だな」
神獣様はニコさんの側に行き圧力を掛ける。
私も神獣様もニコさんの手作りお菓子の虜だからね。有名店や人気のお店より、ニコさんの手作りの方が断然美味しい。
「スフレパンケーキの材料なら、ここにあると思いますよ。ちょっと見て来ますね」
そう告げると、ニコさんは簡易キッチンに向かう。
「神獣様!! 今日のおやつ、スフレパンケーキですね!! フワフワしてて、口の中で蕩けてしまうんですね。あっ、涎が」
「食いしん坊だな、マリエールは」
「そういう神獣様も、涎が出てますよ」
私も神獣様も、口の中はスフレパンケーキになっていた。だけど、
「……神獣様、マリエールさん、スフレパンケーキは違う日でもいいですか? 蜂蜜がなくて」
とても言い難そうに、ニコさんは告げた。私も神獣様も浮かれてたからね。
「「……スフレパンケーキ」」
項垂れた私と神獣様は呟く。
私は座ると羽ペンを持ち、無言のまま書類に向かい合う。神獣様はトボトボと歩き、窓辺に戻った。
スフレパンケーキ、食べたかったなぁ……。
☆☆☆
読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
昨日から、新作を掲載しています。
タイトルは【俺は、妹が見ていた世界を見ることはできない】です。ライト文芸です。
異世界ものではなく、現代が舞台となっています。
テーマは家族愛。恋愛要素も少し含んでます。
ほっこり・じんわり大賞に応募予定。
これからも、応援宜しくお願い致しますm(_ _)m
応援ありがとうございます!
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