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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です
まだ終わっていませんよ
しおりを挟む「「「「「団長!! 副団長!!」」」」」
団員たちは声を上げる。救世主が来たと思ったのか、ホッとした顔を見せたが、直ぐに下品な笑みを浮かべた。
「お前たち、何をしている!?」
副団長さんが団員たちに厳しい声で尋ねる。だがそれ以上に、厳しく、険しい声を発した者がいた。
「それは、奴隷の首輪だな。それを、団員たちに着けようとしたのか? 人間」
私を射殺しそうな目で睨み付けながら、団長さんは尋ねる。
「違う!! さーー」
「黙れ!! グール!! お前に訊いてはいない!!」
ニコさんの言葉を遮るように、団長さんは怒鳴る。
副団長さんは今にも飛びかかりそうな勢いね。かろうじて、我慢しているみたい。唇の端から血が出てるわ。
「ええ。だって、彼らが先に、私に奴隷の首輪を着けるように、ニコさんに言ったのです」
特に表情も声音も変えることなく、私は答える。いくら殺気を放っていても怖くないわね。ケルベロスさんやヒドラさんの時に感じた、恐怖と圧迫感は感じない。
「私の団員がか?」
団長さんは振り返り、団員たちに尋ねる。
「俺たちはそんなこと言ってません!!」
「信じてください!!」
口々に、団員たちは否定する。
素直に認めはしないよね。はなから、期待なんかしてないわ。そもそも、素直に謝れる奴なら、最初からそんなことは言わないわね。
「これだから人族は!! 団長、捕えて牢にぶち込みましょう!!」
「そうです、団長!!」
副団長さんの台詞に被さるように、団員が声を上げる。ニコさんに対し、無礼な発言をした奴だった。
「もしかして、団長ともあろう方が、片方の意見だけを尊重して、私を捕らえるのですか?」
団長さんから目を背けることなく尋ねる。もし捕えようなら、愚かもいいところだわ。
「我々エルフ族が、そんなことを絶対口にするものか!!」
代わりに答えたのは、副団長さんだった。
「それは、かつて、人族がエルフを捕らえ、奴隷として扱っていた歴史があるからですか?」
人族は昔、亜人たちを奴隷として扱っていた。
負の歴史ーー
私たち人族にとっては歴史でも、された側は歴史じゃない。ましてや長命種だし、尚更よね。
「そうだ!! 我々、エルフ族が奴隷にするなど、口が避けても絶対に言うものか!! 薄汚い人族が!!」
副団長さんは、ますますヒートアップしていく。
「ならば、それを口にした者をどうするつもりですか? 副団長さんは?」
反対に、私は段々冷めていく。
「決まっておるわ!! 鞭打ち百回してから、炭鉱で働かせてやる!! 奴隷用の首輪の代わりに、顔に罪人の焼印を押してやる!!」
副団長さんの台詞に、私はクスッと笑う。
「その場限りではありませんよね?」
「馬鹿にするな!!」
団員たちの顔を見れば、若干青くなっている。でも、まだまだ余裕よね。そりゃあそうか、証拠なんてないって思ってるからね。証言だけじゃあ、無罪にはならない。それに、こちらには奴隷の首輪がある。完全に分が悪いわ。でもね、
「相手が自分の身内でも?」
「当たり前だ!!」
副団長からの言葉は貰った。後は、団長さんね。
「団長さんはどうです?」
団長さんに視線を向け、尋ねた。団長さんは変わらず鋭い視線を私に向けている。
「罪を犯した者は、罪によって裁かれなければならない。そこに、差別はない」
団長さんからもお言葉を貰えたわ。
「その言葉、きちんと記録させてもらいましたね」
「「記録(だと)……」」
「ええ。この魔法具で」
そうにっこりと笑いながら告げると、私は魔法具を起動させた。
すると、すぐにさっきの問答が再生された。
ここに来て、団員たちは焦り出す。顔色も真っ青になり、冷や汗を額に浮かべている者もいた。
やっと、自分が置かれている立場を理解したようね。でも、もう遅いわ。完全に詰んでるのよ。団員たちも、その上司の副団長さんと団長さんもね。
ダークエルフの皆さんは、皆言葉を発することができない。なら、私が続けるわ。
「ちなみに、この魔法具の映像は加工することはできませんわ。もし、少しでもしようものなら、中身の映像とともに、魔法具自体が壊れる仕組みになっていますわ。もちろん、そんなこと、貴方がたも知っていますわね。常識ですから。……では、再生しましょうか」
そう告げ、魔法具を起動させようとした時でした。
ニコさんに無礼な口を聞いたあの団員が、「止めろ!!」と怒号を吐き、私に私の上半身くらいはある火の弾をぶつけてきた。咄嗟に避ける、副団長と団長。それはそれで、どうかと思うわよ。
「マリエールさん!!」
「「何を!?」」
ニコさんと副団長と団長さんが叫ぶ。
私も神獣様も何もしない。だって、する必要ないもの。これくらいの火の弾なら。結界を張る必要もないからね。
「燃えろ!! 人間ふぜいが!!」
狂ったかのように叫ぶ、団員。
「ざ~んねん。これくらいの火の弾で、私を殺そうなんて、無理無理。せめて、この五倍の威力がないと傷一つ付けれませんよ。結界を張れば、傷さえ付けれませんね。自滅してくれてありがとう、団員さん」
攻撃してきた団員さんに、真っ黒な笑みを向けた。更に、言葉を続ける。
「それでは、起動させますね」
そう言うと、私は魔法具に魔力を流した。
再現される映像。
せっかく流した映像を見ずに、「……化け物」と呟きながら、力なく座り込む団員さん。他の団員たちも似たりよったりの姿だ。
失礼ね。うら若き乙女に向かって。
「それで、団長さん、彼らをどうするのです?」
そう尋ねると、険しい表情のまま、地を這うような低い声で告げた。
「魔力を封じた上で、鞭打ち百回。重犯罪者の焼印を顔に押して、炭鉱に移送する」
魔法具がなければ、するかしないかはわからなかったけど、撮られている可能性がある以上、するしかないよね。
「そうですか……残念ですね。ところで、彼らを連れて行く前に、一つ質問があるのですが、答えてもらえますか?」
黒い笑みを引っ込め、にっこりと微笑む私に、団長さんは睨み付けながら答える。
「何だ?」
全てが終わったと思ってるようだけど、まだ前半だけだよ。それじゃあ、続きといきましょうか。
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