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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です

乗り込むの一択しかないでしょ

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「……次は、ダークエルフが率いる第三魔術団ですよね?」

 魔王城の廊下を歩きながら、私はニコさんに尋ねた。

「そうですけど、くれぐれも、先ほどのような無茶はしないでください!! いいですね、マリエールさん」

 また、ニコさんに釘を刺されたわ。そんなに私、喧嘩早くないわよ。

 隊長さんのことも、自分から喧嘩を売ったわけじゃないわよ。そもそも、向こうが悪いんじゃない。ニコさんを武器を翳して脅し、無理矢理、言うことを聞かそうとしたのよ。その拳や蹴りが武器だと承知しながらね。黙っていられるわけないわ。

 私にとって、ニコさんは大切な上司であり、友人なんだから。

 間違ったことはしてない。だから、

「う~ん、それは、約束できないわね。また、虎獣人の隊長さんのように、武器を使い脅してきたら、前に立つかも」

 正直に答えた。

 できない約束は初めからしない。虎獣人の隊長さんのような真似をされたら、絶対手を出すから。ニコさんに手を出させない。

「マリエールさんが強いのはよくわかりました。でも……貴女が傷付いていいことじゃない。それに、弱くても、私は男です」

 その目の光は、今までの中で一番力強く、意思を持っていた。

 初めて言われたわ……他人に、私が傷付くことを咎められたのは。

 まだ、傷付くとは決まってないけど、ニコさんの前では、できる限り無茶は止めようと思う。悲しませたくないからね。

「わかりましたわ。気を付けますわ。でも、私にも護りたいものがあることだけは、覚えておいてくださいね、ニコさん」

 微笑みながらそう言うと、ニコさんが挙動不審になった。
 
「なっ……何を言ってるんですか!?」

 えっ、変なこと言った?

「ニコさん!! 顔真っ赤だけど、どうしました? まさか、無理しすぎて熱が出たのではありませんか!?」

 手をニコさんの額に伸ばそうとしたら、神獣様に止められた。ニコさんには逃げられた。ちょっと、ショックだよ。

「間もなく、奴らのテリトリーだぞ」

 神獣様の台詞に自然と足を止めた。ニコさんと神獣様も足を止める。

「侵入者防止の魔法ですね。警報付きですか……厄介ですね」

 解除するには時間が掛かるし。っていうか、王城内で、何でこんな魔法を?

「警報? 以前は付いてなかったけど」

 ニコさんは不審げに前方を見る。

 侵入者防止の結界は張ってたのね。苦笑する。

 ということは、何かを警戒してより強固にしたようね……でも、ここまで警戒する必要ある? 何か開発、発見したのなら、ニコさんの耳にも入ってると思うわ。予算が必要になってくるからね。

 他に考えられるとしたら……

「私と神獣様を試すためですか?」

 だとしたら、腹が立つわね。

「だろうな。主に、マリエールだろう」

 私の問い掛けに、神獣様が答える。

「私? 何でまた、そんな面倒くさいことを?」

「魔王が連れて来た、初めての人間だからだろうな。それに、ニコを救うために魔王の正面に立ち、意見しただろう、そのせいだな」

 やっぱり。ですよね~。

「……神獣様。確か、ダークエルフって、エルフの上位種でしたよね。身体能力、魔力共に秀でている種族で、知的好奇心がやたら高い種族だと、書物で読んだのですが、違いましたか」

 愛読書の魔物図鑑に、そう書いてあった。

「ある意味、知的好奇心の塊かもしれないな。傍迷惑な種族だ。気に入られたら、構い倒されるぞ」

 神獣様、とても嫌そうな表情だわ。その表情も可愛い。撫で撫でしたいな。

 そんなことを考えていると、神獣様は可哀相な子を見る目で私を見上げた。時として、表情よりも目が多くを語る。

 今更だけど、私は誤魔化すようにコホンと一回咳をすると、尋ねた。

「構い倒される?」

「そのままの意味だ」

 それ答えになってない。

「どういうことです? ニコさん」

 私は隣にいるニコさんに尋ねた。

「興味を持った者には、相手が嫌と言っても、とことん甘やかすんですよ。極甘ですよ。その他には塩対応。落差が激しい種族ですね。ましてや気分屋だから、ちょっとした言動で態度がコロッと変わります」

 ニコさんの説明に、神獣様はコクコクと頷いている。

 それって、マジで……超面倒くさい種族じゃないですか? 関わりたくないわ。このまま、回り右したいわ~。

「それでよく、第三魔術団が成り立ってますね……?」

「ひとえに、魔王様の実力ですね」

 その一言に尽きるわね。さすが、魔王様。見た目幼くても魔族一の実力者。

「でも、魔王様の傍にダークエルフがいたのは見たことありませんわね」

 そんな種族なら、何としても魔王様の傍にいるはずだよね。

「あ~それは、魔王様、超塩対応で傍に寄れないからですよ」

「…………それじゃあ、魔王様と交流がある私は……」

「ダークエルフにとって、敵ですね」

 はっきり言うわね、ニコさん。

「だとしたら、私がいない方が交渉し易いのでは……」

 邪魔なら、おとなしく待ってるけど。

「大丈夫だ。マリエールは我が護る。ダークエルフなんぞに、危害は加えさせぬ」

 私の目を見詰め、神獣様がそう言ってくれた。

「神獣様……」

 格好いいです。凛々しいです。嬉しくて、ギュッと抱き付いてしまった。もう!! 首の毛フワフワで最高です。ご馳走さまです、神獣様。

「ほんとに、神獣様とマリエールさんは仲がよろしいですね。それで、この結界どうします?」

 問題はそこね。だけど、

「ニコさん、私、売られた喧嘩は、普段は買わない主義なんですよね。面倒くさいから。でもね、こんな風に、姿を現さずに高みの見物をきめこんでいる人に対しては、多少面倒くさくても買いますの」

 正面から乗り込むの一択しかないでしょ。悔しがるダークエルフの顔を拝んでやるわ。
 



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