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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です
いつの間にか、スキルが進化していました
しおりを挟む奥の方から、ゆっくりと近付いてくる気配。
かなり遠いはずなのに、その気配がヒシヒシと伝わってくる。寒イボが全身に出てるのがわかるわ……ついでに、この場に居続けた先の未来もね。
私が取るべき道は一つしかない。
「ほら、行くぞ。マリエール」
神獣様が前足で、壁をチョンチョンと突く。神獣様の神力に反応したのか、魔法陣が壁に現れた。すぐに消える。すると通路が。当然、神獣様と一緒に飛び込んだよ。
「……隠し通路に入ったからといって、安全なわけじゃないよね、絶対」
完全に素で呟く。
「安全なダンジョンなぞ、存在するのか?」
反対にそう訊かれたわ。
「そうですわね。ないのはわかってますわ。わかってますけど、いきなり、あれは何なの!!」
神獣様に文句を言っても仕方ないんだけど、言わずにはいられませんでした。
「何なのと言われてもな……魔王は騒がしいことと、人間を嫌うからのう。玄関先で騒がれれば、即排除してもおかしくない」
「……その排除の仕方がおかしいと言ってるの」
「おかしいか? 確実な方法であろう」
首を傾げても絆されないんだからね。う~可愛い。
「確かに確実ですけどね。でもねーー」
言葉を続けようとしたところで気付く。通路の奥が紫の靄に覆われていることを。口元がピクピクと引きつる。まさかーー。
「……あれ、毒霧とか言わないでくださいね」
「おお、さすがだな、マリエール。よくわかったな。あれはヒドラの毒霧だたが、安心しろ。ヒドラはいない」
あ~~目眩が。ケンタウロスの次はヒドラ。
「…………死んだわ。間違いなく、死んだわ……」
ヒドラの毒に効く薬は存在しない。最高位クラスの〈毒解除〉の魔法を掛け続けて、どうにか生き残れるかもしれない希望が持てる……かも。ちなみに、私は最高位クラスの〈毒解除〉の魔法は習得していない。高位クラス。完全にアウトね。ヒドラがいようがいまいが、先は同じ。
「何故、マリエールが死ぬんだ?」
「神獣様。私は人間ですよ。ヒドラの毒に抵抗できるはずないでしょ!! 毒にやられて、生きながら腐っていくんだわ~~」
「いや、腐らないだろ。マリエール、お前は〈毒無効化〉のスキルがあるだろう」
ん? 〈毒無効化〉のスキル……?
首を傾げる。そんな私を、神獣様は残念そうな目で見ている。
「……マリエール。あの糞女神の眷属に噛まれまくっただろ」
呆れた口調の神獣様。
「あ~~確かに、糞女神を捕まえるために噛まれまくりましたね」
あの時は必死だったから、自分の身は考えてなかったわ。
「あれ、全て猛毒を持つ蛇だったのだ。急激に過剰な毒の摂取。あれは、ヒドラに匹敵するまでの毒だった。だがマリエールは、生き残った。マリエール自身に〈毒耐性〉のスキルがあったからだろう。その時にスキルが進化したのだ。〈毒耐性大〉から〈毒無効化〉に」
「えっ!? マジで?」
「確認してなかったのだな」
溜め息混じりに言われた。
慌てて私はステータスを確認する。ギルドで鑑定されるけど、それは簡易的なもの。目立たないように、細工してたし。
「あ……本当ですね、〈毒耐性大〉が〈毒無効化〉にスキル進化してる。ん? えーー!! 〈麻痺無効化〉に〈石化無効化〉って……何かのミス?」
「な、わけあるか。糞女神に勝ったのだぞ、何を驚く」
「そうだとしても!!」
紫の靄が周囲を取り囲む中、私は神獣様に詰め寄る。
「素直に認めろ。マリエールはそれだけのことをしたのだ。言っておくが、スキルの進化に我もゼリアス様も関わっておらぬからな。全て、マリエール、お前の努力と行動で手に入れたものだ。誇るが良い」
神獣様の言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。自分の努力を認めてもらえることが、こんなに嬉しいなんて、神獣様に出会わなければ知らないままだったよ。
「ありがとうございます、神獣様」
「礼を言われることはしていない。まぁ……後は呪いだが、それも、考えるより早くどうにかなりそうだしな」
「そうなのですか?」
思い切って、私は今の現状について訊いてみることにした。信用していないって思われるのが嫌だったから、なかなかできなかったのよね。
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