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第五章 呪いが解けるまで楽しむ予定です
下手な美術作品よりよほど綺麗です
しおりを挟むほんと、恥ずかしいな~~。あんなに大泣きして。成人はしてないけど、もう泣くような年じゃないのに。
「我からしたら、マリエールはまだまだ子供だぞ。赤子は泣くのが仕事だ、気にするな」
カッカッと笑いながら、神獣様は言う。
「まぁ……神獣様にとって、人間である私は赤子と同じなのはわかるけど……」
なんか、釈然としないわね。でも、
「少しはスッキリした顔になったな」
神獣様が私を見ながら言った。
うん。そうだね。心に蓄積していた靄、いやヘドロが少しだけど、流れ出た気がするわ。
「ありがとうございます、神獣様」
「うむ。たいしたことではないから、安心せい。よいか、マリエール、我慢するのに慣れたとしても限度はあるのだ。そのことを、しっかりと覚えておけ」
「……はい。また泣きたくなったら、抱き付かせてくださいね」
神獣様の言葉が、私の心にスーと染み込み広がる。
「しょうがない奴だ」
苦笑しながらも、神獣様は拒否しないし迷惑がらない。口調は面倒くさそうだけど。
本当に、神獣様は優しい。懐が深すぎる。だから、甘えてしまう。私が甘えられるのって、神獣様だけよね。カイン殿下にも甘えることはあるけど、その甘えとは違うのよぬ。しいていうなら、甘えた振りが近いわね。
「最後のそれ、アヤツには絶対言うな。後々面倒くさいことになるからな」
「わかってます。安易に想像出来ますから」
「なら、いい。それでは、楽しむとするか、ダンジョンを」
「はい!!」
元気が湧いてきたわ。
さぁ行くわよ。ダンジョンの入口はもうすぐ。水の音が大きくなってきたわ。この先で緑が切れてるわね。拓けた場所に出るみたい。
「その先にダンジョンの入口がある」
薄暗い場所ばかり歩き続けていたから、一瞬、目の前が眩しすぎて真っ白になったけど、すぐに元に戻った。霧雨が降っていた。
「えっ!? 滝!?」
森の中に滝があるの!? で、水源は!?
「水源はあれだ」
空中に浮かぶ巨大な水晶。その水晶を中心に魔法陣が展開している。そこから大量の水が放出していた。霧雨は水飛沫が霧状になったものだ。
「あっ、あんな、大きな魔石があるの!? それに、あの魔法陣は高度な術式よ!! それを展開し続けるなんて、最低、糞女神レベルの魔力か神力がなければ無理よ」
つい、敬語を忘れて素の口調になったわ。
ーー最高位の魔法陣。
下手な美術作品よりよほど綺麗……感動するわ。涙出そう。
「ふむ。あやつは、魔力だけは飛び抜けて豊富だからな。これくらいどうさもないことよ」
どうさないって……
神獣様の友だちって何者なの!? 魔王か竜王様、或いは神族クラスに違いないわ。決定ね。
「マリエール、こっちだ」
魔法陣に見惚れている私を、神獣様が呼ぶ。私は魔法陣に視線を向けたまま、神獣様を追い掛ける。神獣様が向かうのは滝の方。
すぐに気付いた。滝の奥から魔力を感じる。魔法陣と同じ魔力ね。
「滝の裏側ですが?」
「そうだ。その奥で引き篭もっておる」
「神獣様が来たの、気付いてますよね、絶対」
「うむ。気付いておるだろ。手厚く、もてなしてくれるだろうて。楽しみだ」
そのもてなしてって、罠とかじゃないよね。頬がひきつるわ。
「……そうですね」
辛うじて、私はそう答えるのが精一杯だった。
「では、行くぞ」
神獣様が一歩踏み出す。ほぼ同時に、私も足を踏み出した。
怖いけど、気持ちはとても高揚しているんだよね。ワクワクするわ。いったい、どんな景色が見れるんだろう。どんな魔法陣が見れるのかな。すっごく楽しみ!!
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