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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします
三度目はありません
しおりを挟む「あの様子では、明日も来そうだな」
寝る準備をしていると、神獣様が話し掛けてきた。
誰が? とは訊かないわよ。だって、そんなの決まってるじゃない。
「…………」
返事の代わりに、顔を歪める。無言は肯定。私も内心そう考えていた。今だけ、他の場所に避難しようかな。真剣に考える。幸いハンターだし、家をあけてもおかしくないしね。
「それでは、問題解決にはならんだろ?」
心の声を読んだ神獣様に突っ込まれた。
「まぁ、確かにそうですけど……解決する必要あります?」
そもそも、問題そのものがすでに曖昧になってるんだよね。義父様の中では違うかもしれないけど。
「それを言ったら、お終いじゃないか」
神獣様が呆れながら言った。
「そうですね……」
拒否しているつもりはなくても、拒否しているのかもしれない。
自分が時折、冷たい人間だと思うことがある。こんな風に、人との距離がわからなくなった時かな。
そういう時、一歩踏み出し打開する人と、立ち止まる人がいるけど、私はどちらでもなくて、一歩後退するパターンね。ちなみに、義父様は踏み出す人だ。ぐいぐい来る。その度に私が下がるから、距離は詰められないわね。
それでも、ニ度は立ち止まったのよ。
一度目はオルガ義兄様を助けるために領土に行った時、二度目はアイが起した事件の後だ。でも、結果がアレだった。さすがに、三度も立ち止まるのは嫌かな……
「マリエール、お前の好きにしたらいい。もし留守にするつもりなら、今夜のうちに出発しないと邪魔が入るぞ」
だよね。私が逃げ出さないように、義父様よりも早く護衛の二人が来そうだわ。夜が明けると同時に来そうよね。夜は魔物が活動的になってるから野宿できないからね。結界内ならともかく。
「……行く場所は後から考えればいいですね」
会わない。その一択しかないわ。
「なら、ダンジョン探索はどうだ?」
「ダンジョン探索?」
この近くにダンジョンってあったかな?
「あるぞ」
だったら、ハンターギルドにダンジョンに関する依頼があるはずよね。そんな依頼書、貼り出してるの見たことないわね。
「わかりにくい場所にあるからな。それに、ここら辺のハンターのレベルで、この森の深層部はまず到達しないだろう」
ああ、だから、ダンジョンの存在が知られてないのね。知られてないのなら、ないと同じことか……
「いいですね。行きましょうか」
楽しくなってきたわ。未開の地を探索するのってウキウキするよね。例えば、誰も歩いていない新雪の上を歩くとか。
「我も楽しくなってきたぞ。そのダンジョン、魔石の宝庫でな、中々美味しい食材も多数あるのだ」
「行ったことあるのですか?」
「昔、我の知り合いが、そのダンジョンをねぐらにしていたのだ。引っ越したとは聞いてないしな、今も住んでいるだろう。楽しみだな」
神獣様の知り合い? ってことは、神族に属するか、それとも同等なものに属しているってことになるよね……うん、考えないようにしよう。まぁ、最下位層まで行かなくてもいいしさ。
「行くぞ。なぁに、心配するな。道は覚えておる」
いや……その道中に現れる魔物って……
念のために、マジックバックに詰めれるだけの回復アイテムを詰め込まなきゃ。食材と調味料もね。もちろん、調理器具も。あっ、寝具もね。服は最低限でいいかな。【浄化魔法】があるから。
後は書き置きね。
文面は、そうね……〈急な仕事が入ったので、しばらく留守にします。心配しないでください〉でいいわね。
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