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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします

護衛はいりません

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 騎士君は、鞘に入ったまま剣を中段で構えている。

 そのまま、私の攻撃を受けるつもりね。それで、勝負が決まると騎士君は考えているみたい。そりゃあそうよね。鉄に木だもの。普通に考えても、木の方が強度がかなり低いわね。ポキッと折れて終わり。そもそも、私の攻撃なんて大したものじゃないって、考えてるのが見え見え。魔術師だから? だとしても、失礼よね。私が魔法を使わないって言った時点で、多少なりとも覚えがあると考えるべきなのに。

 それに、木の棒で立ち合うって言ったけど、木の棒で打ち合うとは一言も言ってないわよ。

 剣に触れる寸前で止めて、そのまま体を反転させたらどうなると思う? 反応できるかな、騎士君。躊躇したり、反応が遅れたら、防げないよ。こんな風にね。

「背中がガラ空きですわ」

 敵に背後を取られるわよ。

 その声に瞬時に反応する騎士君。いい反応。

 でもね、すでに間合いに入られた上で背後を取られるのは致命的よ。こんな風に下から木の棒を振り上げられたらどうする? 達人でさえ防ぐのは難しいよね。

 私はピタッと騎士君の首元で、木の棒を止めた。騎士君は動けない。

 勝負あったわね。

「そこまで!! 勝者、リラさん」

 フランクの声が森に響いた。

 私は木の棒を下ろした。息一つ切れていない。

 反対に呆然とする騎士君。まぁそうよね。騎士なのに、剣を振るうことなく終わったんだから。それも年下の小娘相手によ。矜持はズタズタなんじゃない。そこから這い上がってこそ、力が身につくんだけどね。どうなることやら。まぁ私には関係ないけど。

「……反応は、思っていたよりはよかったですね。だけど、まだまだ未熟ですわ。経験不足もあると思いますが、それ以前に見た目に騙されて、相手の実力を測れなかった。騎士君の最大の敗因はそこですね」

 聞こえてますか? 聞こえてませんね。

「…………嘘だろ……」

 片膝を付き、項垂れ呆然と呟く騎士君。

 いつまでいるつもりかな? さっさと帰って欲しいのだけど。

「先日の野盗討伐を見て、かなりの腕前だと思っていたが、これほどまでとは……さすが、剣聖の弟子、邪教徒の本部を壊滅させた腕前。さすがですね」

 感嘆の声をあげるフランク。

 彼は素直に人を褒めれる人だ。謝罪もできる。初対面は最悪だったけど、今はプラスの好感度。こういう人は嫌いじゃない。

 とはいえ、あまり人から褒められたことのない私は、どう返したらいいか正直戸惑う。素直に、ニコッと微笑みながら「ありがとう」って言えばいいんだけどね。私がやると、どうしても苦笑にしか見えないわね。口角がひくついてるのが自分でわかるわ……

 それにしても、フランクは色々知ってるようね。たぶん、義母様に訊いたのね。

 この国の双璧の一つ、第一騎士団団長ルーカス様。私は四年前から彼に剣を習っていた。知り会う切っ掛けになったのは、元屑親絡み。正式に習うのは、邪教徒絡みで私が家出した後ね。おかげで、それなりに扱えるようになった。

 騎士君はよほどショックなのか、焦点が定まらない目でフランクの話を聞き私を見上げている。

「褒めても、何も出ませんわよ。それでは、約束通り、私には護衛は不要ですわ。お引き取りくださいな」

 やることがまだまだ残ってるのよ。これ以上、貴方たちに時間が割けないの。さぁ、帰った帰った。

 苦笑しながら、フランクは騎士君を立たせると森を出て行った。




 次の日ーー。

 木苺を採りに森の中を散策していると、見知った顔と出会いました。

「……護衛不要と言いましたよね」

 超不機嫌な声を上げてるのは、当然私。反して、ニコニコ顔のフランク。

「護衛じゃない。修行で森に来ただけですよ」

 ものは言いようですね、フランク。彼の背後には、不機嫌そうな騎士君。私と目を合わせようともしない。

 修行ね……そうですか、そうきましたか。ならば、私は無視して木苺採りを続けましょうか。
 
 掃除は一通り終わってるから、これでジャムでも作ろうかな。ついでに狩りもして。香辛料を揃えたから、煮込み料理もできるわね。それとも、木苺のソースで焼いた肉を食べるのもいいわね。野菜も茹でて。

 あっ、想像すると涎が。お腹が鳴った音、聞かれてませんよね。



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