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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします
家族
しおりを挟む捕らえられた裏切り者は、義姉様の実父である伯爵家の家令だった。フランクと顔見知りだったのも頷けるわね。
元家令が誘拐を企てた理由は至って単純だった。王都から出されたことによる不満から企てたらしい。
それだけで? って、疑問に思うけど、本人にとってはかなり不満だったみたいだわ。そうじゃなかったら、そもそもこんなこと企てないわね。
なんでも、本人曰く、一生懸命働いて勉強して、やっと王都で働けるようになった途端、伯爵様の我儘のせいで田舎に。彼は夢を無残に壊されたと感じたみたい。十分な給料を貰ってたのにね。私には理解できないわ。王都よりも田舎の方が好きだから。肌があってるのよね。
でも、元家令は違った。
彼にとったら、十分主を裏切る理由になったってことよね。それだけ、王都に夢を持っていたのね、きっと。
元家令が捕まった、翌日ーー。
さすが、武闘派で有名なグリード公爵家。二日の距離を一日で駆け付けた。オルガ義兄様以外、全員集合。といっても、義母様とアル義兄様だけですけど。義姉様もそうだけど、義母様も凄いわね。見た目と正反対だわ。
家族の無事を確認すると、休む間もなく伯爵様と対面。事実確認をした。私は離れた場所でその様子を見ていた。一応関係者枠で。
それにしても、伯爵様の顔、始終歪んだままね。まぁ、気持ちはわからなくもないけど。
グリード公爵家の面々に、責められなかったことが伯爵様にとってはよほど堪えたみたいね。遠回しに、自分のせいだと言われたみたいで。伯爵様は肩を落とし寂しく屋敷に戻った。自分の領地に帰るかは知らないけどね。
伯爵様が屋敷に帰ったってことは、事実確認は終わったのよね。なので、私も一緒に下がろうとした。そして、そのまま町から出ようと考えていた。
スローライフの必需品はゼリアス様から頂いているからね。空き地があればできる。実は森を移動している時に廃墟を見付けたのよね。あの建物に手を加えたら、十分住めると思うわ。後は、あの廃墟が誰かの持ち家でなければいいんだけど。最悪買うにしても、あの立地条件と建物の壊れ具合なら、かなり安いと思うわ。運が良ければ、タダでくれるかも。でも、タダより怖いものはないっていうし……
そんなことを考えていると、何だか楽しくなってきた。
そんな私を見て、冷たいって思う方もいるでしょうね。それとも、大恩を受けながら、そんな態度をとる私を責める方もいると思うわ。まぁマイナスしかないわね。
そうとわかりながらも、私は家族と距離をとる。
それが一番良いのだと、私は信じてるから。
程よい距離ってやつね。ほんと、私って、嫌になるほど冷めてるわ。自分のことなのに、他者視点だし。
だから、グリード公爵家と関わるつもりはないわ。だって、色々面倒くさいことになりそうだもの。絶対、一緒に屋敷に戻ろうと言ってくるに違いないからね。それだけは、どうしても嫌!! そもそも、その部屋は甥っ子と姪っ子のものでしょ。
野盗を捕らえた報酬は、フランクに全額渡しても構わない。ていうか、貰ってくださいな。迷惑料として。そうと決まれば、やることは一つね。
実力者ばかりだからね、念のために、【認識阻害】の魔法を強めに掛けた。
すると、部屋にいる全員が私と目が合わなくなった。うん、これなら抜け出せそうね。
義母様もアル義兄様は私という存在が見えていない。勿論、義姉様も。義母様が侍女に私を連れて来るように言ってるしね。後は、侍女と一緒に部屋を出るだけね。
音をたてずに部屋を出て、廊下を歩いていると、背後に人がいる気配がした。
「「……マリエールおねえちゃま」」
眠そうな双子が目を擦りながら立っていた。
えっ!? まだ、魔法を解いてないよね。驚きながらもしゃがむ。そして、双子の顔を間近で見て気付いた。
「……これって、魔眼!?」
それも片目ずつ。護衛騎士が義姉様の言葉を遮った理由がわかったわ。私でも同じことをしたよ。これは人に知られてはいけない。例え身内でも。
間違いは正さないといけないわね。
私は小さく息を吐き出すと踵を返した。アインとマリアと一緒に。
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