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第四章 これから先の人生はイージーモードでお願いします

退屈しなくてすみそうです

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 意外と殿下って、口が悪いんだよね。普段は猫を幾重にも被ってるから、王宮で働いている人や学園の生徒は知らないけどね。

 夢の世界から強制退場となった殿下の不機嫌な声が木霊する。

 私は微笑みながら、落ちていく殿下に手を振って見送った。

 まぁ、生きてるんだから当然だよね。いつまでも、夢の世界に留まれるわけにはいかないでしょ。居心地が良くても。このままここに居たら、肉体が衰弱するわ。最悪、死だよ。なのに、殿下はギリギリまで居ようとした。そして、呆れたゼリアス様によって強制退場されたの。殿下のことだから、すぐこっちに来そうだけど、それは難しいかな。ゼリアス様が目を光らせてるからね。

 完全に殿下の声が聞こえなくなると、私はゼリアス様に向き合った。

「ゼリアス様、ご配慮ありがとうございます。……それで、体が癒えるまで、私は何をすれば宜しいでしょうか?」

 体が癒えるまで、じっとこのままって……さすがに退屈だわ。

 そんな私に、ゼリアス様は呆れ気味だ。

「心を休めよと言っても、休まないのだろうな。働き過ぎだと自覚していないのが、一番の問題だ」

 呆れるゼリアス様に、私は首を傾げる。働き過ぎって言われてもね……どこがそうなのか、正直わからない。

「まぁいい。それはおいおいわかればいい。そうだな。一つ、マリエールに頼みたいことがある」

 ゼリアス様の言葉に私は目を輝かせる。やることあった!! これで、退屈しなくてすむ。

「何でしょう」

「そんなに、期待した目で我を見るな。……我の代わりに、下界に降りてほしいのだ」

 つまり、今までいた世界に戻れってことだよね。今私が戻ったら、アンデッドとして退治されそう。

「下界に? 肉体はどうするのです? まさか、このままではありませんよね」

「体は我が用意しよう。その体に入り、人間の世界をその目でしかと見てほしいのだ。我の目になってな」

 ゼリアス様の目? 私がですか?

「どういうことですか?」

 思わず、尋ね返したわ。

「我は全体を見通すことができる。だがな、細かいところは、どうしても見落としてしまいがちになるのだ。人の世で大事なのは、そうした細かい場所であろう。故に、我の目になってほしいのだ」

「つまり、こういうことですか。全体は見通せても、細かいところは無理というか、苦手だから私に見てきてほしいと」

「そうだ」

 なるほど。理解できたわ。使徒らしい仕事ですね。

「見るだけで宜しいですか?」

 そこらへんは、一応訊いとかないとね。

「構わぬ。現場の判断はマリエールに任せる」

 ということは、手を出しても構わないってことよね。

「畏まりました。期間は、体が癒えるまで宜しいですか」

「ああ。頼んだぞ。当座の費用その他は、こちらでもつから心配しなくていい」

 それは助かるわ。無一文で放り出されたら、結構面倒だからね。まぁ、お金の儲け方はよく知ってるけど。

「はい」

 これで、退屈しなくてすみそうね。

 

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