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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
信仰の力
しおりを挟む「……まずは、一人。……あれ? 誰もいなくなりましたわね。残るは、糞女神、貴女だけよ。覚悟しなさい」
私が低い声でそう言い放つと、糞女神は俯く。その体は小刻みに震えていた。
追い詰められたショックで泣いてるの? いやまさか、あの糞女神にそれはないわ。だったら、何で震えてるの?
「……何故、誰も攻撃しないのですか?」
インディー様が訊いてくる。確かに、糞女神は隙きだらけだ。だけど、私も殿下も神獣様も、ソフィアと同化した糞女神に攻撃を仕掛けなかった。
正確にいえば、できなかった。
本能が止めたって表現した方が正しいかな。何かが私の神経に障った。
クックック。
もしかして、笑ってるの?
あまりの異様さに、私は緊張感を増す。たぶんそれは、この場にいる全員がそう。
「……そこの、可愛い子の言う通りよ。どうして攻撃してこないの? アリエラ。我は、もっと近くでお前を見たいのに」
最後の台詞は私の間近で聞こえた。
目の前に糞女神がいるーー
ということは、私と神獣様の結界をすり抜けたってことよね。どういうこと!?
疑問に思うよりも早く体は動く。さっきの司祭と同様、後ろに飛び距離をとろうとした。瞬間、肩口に鋭い痛みが走る。見れば、真っ黒な蛇に咬まれていた。
「「マリエール!!」」
「マリエール様!!」
皆の焦った叫び声が聞こえる。
叫び声と同時に神獣様が攻撃し、私から糞女神を引き離す。殿下は私の体を支えようとした。しかし、私に触れることはできなかった。見えない力に弾かれ部屋の隅に追いやられる。神獣様もインディー様もた。
ーーやられたわね。
私は蛇の胴体を掴み剥がした。咬まれた肩が燃えるように熱い。焼きごてを当てられたよう。肌の色も浅黒くなり、段々広がっていく。
毒消しの魔法も、ポーションも効かない。だとしたら、これは呪いーー
最後の最後でヘマをやったわね……ほんと、私は馬鹿だ。でも、どうやって結界を……? あ……腕の感覚がなくなってきた……やばいわ、目もかすんできた。結界のことは、今は考える必要ないわね。時間もないし。
動けない私に近付き、顎の下に手を添え、糞女神は顔を無理矢理上げた。糞女神は満足そうな笑みを浮かべ、私を見下ろす。
「我が、お前たちの結界をすり抜けた理由が知りたいか……簡単なことよ。お前たちより、我の方が力が上だっただけ。下位に落とされても、邪神と呼ばれてもね。何故だかわかる?」
考えられる理由は一つ。
「……信仰の……力ね…………」
そう答えると、糞女神は微笑む。その笑みに温度は感じなかった。とても冷たい笑みだ。底冷えしそう。
「そう。神力の力の源は信者の信仰心。愛って一つだけではないでしょ。家族愛、師弟愛、友情もそうよね。ペットも。勿論、恋愛も。愛を長続きさせたい人は多い。その願いが、信仰心になるのよ。教団だけではないのよ。甘かったわね、アリエラ」
「…………そう……ね。甘…過ぎ……たわ…………」
途切れ途切れで、やっと答える。体が動かない。声も出しにくい。息もしにくくなった。さっきまで熱かった体がとても寒くなる。とてもマズイわね。
「あら、素直ね。素直な子は好きよ。だから、ご褒美をあげるわ、アリエラ」
上機嫌な声で糞女神は言う。
「……い…………ら……ない…………わ」
誰がいるか!!
「貴女に拒否権はないわ。アリエラ、その体、我が貰ってやろう。その体も、いいように負の力に染まっているからね」
そりゃあそうよね。ある意味、呪われた存在なのだから。
糞女神は勝手にそう告げると、私に顔を近付けてくる。唇が触れる前に私は言った。
「それは、困るわね」とーー
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