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第三章 超ハードモードの人生に終止符を

お花畑の主もやはりお花畑

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 インディー様のお兄様の容態は幸いにも安定している。まだ目は覚めないが、じきに覚ますだろう。隷属期間も長くないから、影響はほぼ出ないと思うわ。本当に良かった。本当に……

 本来なら、インディー様とお兄様をこの場から撤退させた方がいいんだろうけど……今はそれが出来ない。せめて、屋敷外ならギリ撤退させることが出来たかもしれないけど。糞女神らしいやり方だわ。陰湿で卑怯。性格が出てるわね。

 出来ない理由は一つ。

 屋敷全体が、糞女神の神力が満ちているからだ。ここを離れた途端、インディー様もお兄様も糞女神の手に落ちるに決まってる。二人とも美形だから、隷属化されるわね。

「マリエール様……?」

 考えごとをしていたら、知らず知らずのうちにインディー様とお兄様を凝視してたわ。

「なんでもありませわ。お兄様を神獣様の背中に乗せましょう」

 さっそく、神獣様の背中にお兄様を俯せに乗せた。乗せやすいように、体を大きくしてくれたから大丈夫ね。あ~~フワフワ。さり気に顔を埋めても怒られないよね。

「あらあら、せっかくのお気に入り、悪役令嬢に取られちゃった。ムカつくわね」

 束の間の癒やしの最中にその声が響いた。突然響くその声に私たちは手を止める。

 懐かしい声ーー

 しかし、エントランスにいるのは私たちだけ。声を発した者の姿は見えない。

「……ソフィア・ラング!!」

 インディー様が忌々しげに吐き捨てる。無難に考えたらそうよね。

 確かに、その声の主は嘗て私の異母妹だったソフィアのものだわ。でもね、中身は違うのよ。

 中身は、糞女神。

 あの時も、同じ様なことを聖女を通して言ってたわね。まざまざと記憶が蘇る。

「悪役令嬢ね……月日が流れても、全く成長していないようですわね。お可哀そうに」

 同情心を全面に出して言ってやった。この態度が、一番糞女神が腹立つってわかってるから。

 現に、屋敷を覆っている神力の一部が蛇の形をとり、私を食い殺そうと襲い掛かってきた。だけど、その攻撃は私には届かない。

「いつまでも、自分が主役だって勘違いしてる奴だ。可哀想以前に、かなりイタい奴だろ」

 私に届く前に蛇を一刀両断にしてから、殿下も攻撃に参加する。糞女神、最愛のお気に入りに完全否定されてるわ。

「殿下、駄目ですよ。そんなにはっきり言ったら。アレでも傷付くと思いますから」

 攻撃の手は休めない。笑みを浮かべながらそう言うと、「そうだな」と殿下も大笑いした。

 そうしている間も、蛇は私たちを襲って来る。蛇の形をしてるけど蛇じゃない。神力の一部が具現化したものだ。

 ほんと、馬鹿よね。神力を無駄遣いして。それが自分の身に返ってくること忘れてない? アイリーンに乗り移るにも神力が必要なのよ。勿論、維持するのにもね。

 そして、神力の源は信仰心。

 下位に転落した女神が邪神になったとしてもね。まぁ邪神だから、恐怖心も含まれるだろうけど。

 私たち全員、どっちもないわね。

 教団の信仰心がどれだけ高いかは知らないけど、消費と補充のバランスが崩れば万々歳。

 アイリーンがお花畑なら、糞女神もまたお花畑。思考回路がよく似てるからね。怒らすのは大得意よ。




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