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第三章 超ハードモードの人生に終止符を

誰よりも信頼しているからこそ

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 殿下を抱き締めていると、強い視線を感じた。惹きつけられるように視線を動かす。

 視線の主はインディー様とサクヤだった。まぁそうだよね。向かいに座ってるんだから。

 インディー様とサクヤは、大胆な行動をしている私を咎める気はなさそうね。

 反対に、何かを探るような、厳しくて険しい目で私と殿下をじっと観察してしる。その視線は、とても居心地が悪い。でも分かる気がする。何でも、私と殿下は生まれた時から一緒にいるような、独特な雰囲気を出してるそうだから。まるで双子みたいな感じらしい。

 視線が噛み合って一呼吸後、インディー様が口を開いた。

「……殿下、マリエール様。いったい何を隠していらっしゃるのですか?」と。

 とうとう来たか~~。

 いつかは訊かれる日がくると覚悟はしていたけど、思いの外遅かったわね。機会は今まで色々あった。もしかして、私たちが自分から話すのを待っていたの。だとしたら、ごめんなさい。その日は来ないわ。

 話す話さない別としても、あまりにも要点をズバッと訊いてきたことにちょっとビックリしたわ。まぁ、ズバッと訊くしかないんだけどね。

 その問いに反応するかのように殿下が身動ぎしたので、私は素直に腕を解いた。

「……それを訊いてどうするつもりだ?」

 低い声で尋ねる殿下。

 当然威圧含みだから、普通の相手だったら、まずここで萎縮して言葉が出なくなるわね。でも相手はインディー様とサクヤだもん。そこは全然平気。まぁ、踏み込む勇気はあるのかって、意味の方が強いわね。

「特に何も。何も知らないまま動くのも癪なだけです」

 これ本心よね。

「俺が素直に話すと思ってるのか?」

「思っていませんよ」

 飄々と答えるインディー様。

「なら、何故訊く?」

「ちょっとした意思表示ですよ。駒にも人格があることを認識して欲しかっただけですよ。深い意味はありません」

 インディー様の言葉に、殿下は眉間に深く皺を寄せる。これ、別にインディー様のことを不快に思ってのことじゃない。反対だ。インディー様たちを駒と認識させてしまったことに対する、自分に対しての憤り。

「…………駒とは考えていない」

 とても低い声で殿下は否定する。

「なら、教えてくれませんか?」

 食い下がるインディー様。

「それは出来ない」

「何故です?」

「…………どうしてもだ」

 こうなった殿下は絶対に折れない。長い付き合いのインディー様なら分かるよね。

 だから矛先を私に向けた。そうくるわね。

 射るような視線を私に向けても無駄なんだけどね。殿下が話さないのに、私が話すわけないでしょ。でも……一つだけ言っておきたいことがあるの。

「……私も殿下も、インディー様とサクヤを駒だとは露ほどにも考えておりません。誰よりも信用しています。信頼しております。自分の命を預けられるくらいには。
 とはいえ、何も話せないのも事実。
 もしそれが嫌になら、私たちから離れても咎めたりしませんわ。そこは安心して下さいませ」

 誰よりも信頼しているからこそ話せないことがある。私たちの道は険しいことを、身に沁みて知っているから。自分たちの因縁にインディー様たちを巻き込みたくない。

 結果そのことで、私たちとインディー様たちの間がギクシャクしても仕方ないって思ってる。少し悲しいけどね。二人を失うよりは全然マシ。

 誰一人、裏の真意を知る必要はないの。

 これは殿下と相談して決めたこと。まぁ、成り行きで大聖女様は知ってしまったけど。それはしょうがない。

 友人にも仲間にも、自分の両親でさえ話していないのだから。これから先も話すつもりはない。

 あくまで表向きは、邪教団を完全に潰すこと。それでいいのよ。

 
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