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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
最後の試練(阿婆擦れ視点)
しおりを挟む結構、いい香油置いてるじゃない。良い匂い。これなら、カイン様も喜ぶわね。
でもさぁ……せめて、一人でいいから侍女がいてくれたらよかったのに。どうしても手が届かない場所があるのよね。背中とかさ~~。思うんだけどさぁ~~背中が汚い女って、女捨ててるよね。まぁ、吹き出物は出来てないからまだマシだけど。手の届く範囲だけでも手入れしないとね。カイン様に頼んだら、直ぐに侍女とか付けてくれるよね。でも今回は、カイン様に直接塗り込んでもらうのもアリよね。
だって、こんなにもカイン様に愛されてるだもん。
妄想じゃないわよ。
クローゼットを開けたら、一杯ドレスが入ってたし。サイズも誂えたようにピッタリだった。宝石も一杯置いてあったしね。当然、これ全~~部私のもんよね。でもね……黒ばっかりってどうなの? カイン様ってとっても黒が好きなのね。
普段黒なんて全然着ないけど、結構似合うじゃない。さすが私。鏡を見て少し満足したわ。
でもやっぱり、私は明るい色の方が似合うと思うの。それとなく、カイン様にお強請りしてみようっと。勿論、ドレスに似合う宝石もね。
元々私って、こういう豪華なドレスが似合う女なの。特別なスキルがあるからね。
つまり、選ばれた女なのよ。
出身が孤児院だからって、平民と同じ様に扱われていい女じゃないの。分かってる。
なのに、なのに、あの糞女は!! いつも、いつも、私の邪魔ばかりして。絶対に許さないんだから。
まぁそれは後でじっくり考えるとして、お腹すいたなぁ~~喉も乾いたし。
そんな事を考えていたら、扉をノックする音がした。
「誰?」
「アイリーン様。気分は悪くありませんか?
王太子殿下の命により、アイリーン様のお世話をするために参りました。侍女のマイラと申します」
ちゃんと、侍女を付けてくれてたんだ。でも、遅いって。ドレス着ちゃたじゃない。
「遅いわ。どうしてたのよ!!」
初めが肝心だからね。主人らしくビシッと言いながら扉を開けた。
「申し訳ありません。アイリーン様を先に逃がすのを優先しておりましたので、到着が遅くなりました」
そういう事なら許してあげるわ。私は寛大だからね。
「それで、カイン様はいつこっちに来られるの?」
お茶を淹れてくれる侍女に尋ねた。
「暫くは無理かと……。中々、一人になれる時間が持てなさそうで、アイリーン様を逃がすのが精一杯でした」
「ほんと、何処までも邪魔をするわね糞女」
手の爪をガシガシと噛んで悪態をつく。
「ほんとに。運命の恋人を引き裂くなんて、とんでもない悪女ですね」
「カイン様からの手紙とかないの?」
「申し訳ありません。何せ、急でしたので」
「そう……」
残念ね。
「代わりに、言伝を預かっております。手紙だと、証拠が残るかもしれませんので。
『愛するアイリーン。君を護るためとはいえ、君に辛く当たってすまない。もう少しだけ待っていてくれないか。二人の敵であるマリエールを消す事が出来そうなんだ。マリエールを消したら君を迎えに行く。必ず』とのことです。
アイリーン様は愛されていますね」
目頭を押さえながら侍女のマイラが伝えてくれた。
「……そう。私は愛されてるのよ。待つわ。いくらでも待つわ。カイン様が頑張ってるんだもの。私も頑張らないとね」
私がそう意気込むと、マイラはニッコリと微笑むと「最後の試練ですね。アイリーン様」と答えた。
「そうよ。マイラの言う通りよ。これが最後の試練なのよ。これを乗り越えたら待っているのは、カイン様との幸せな日々ね。王妃って大変だけど、私頑張って務めてみせるわ」
「私も心から応援致します。お側で」
優しい笑みを浮かべて応援してくれてるのが嬉しかった。カイン様の気持ちも知れたしね。正直、酔ってたんだと思う。
だから、気付かなかった。
マイラの目がもの凄く暗かったのをーー。
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