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第三章 超ハードモードの人生に終止符を

実行犯よりも重い罪

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 学園から戻ると、クライスが玄関で私を待っていた。そのまま一緒に執務室に向かう。おそらく、アイの処罰が決まったのね。

「マリエール。アイの処罰が決まった」

 やっぱり……。

 想像していた通りだった。だから、特に動揺はしなかったわ。ただ、そう告げた義父様の声は低く怒りを感じたけどね。

「……そうですか」

 反対に私は平然と答える。思っていたよりも、何も感じない。あれだけ、殺気がこもった目で睨み付けられていたのにね。逆恨みだけど。不思議だわ。

「五十回、公開鞭打ちの後、避妊処置を施され鉱山の食堂に送られる。十年は出て来れないだろうな」

 表情一つ変えない私を観察しながら、義父様は刑を告げた。

 避妊処置されて鉱山の食堂にね……死刑にならないだけマシか。でも、かなり重い罰になったようね。ある意味、実行犯よりも重い罪と言えるわ。

 当然といえば当然よね。実行犯でこそないけど、警備員を唆したことは重罪だからね。だって、学園には殿下が在席しているんだよ。学園の職員の罪は非常に重くなって当たり前でしょ。

 だったら、何故食堂? って、何も知らない人なら思うわね。大半の貴族もそう思うんじゃないかな。

 五十回の公開鞭打ちは兎も角、鉱山でなく食堂で働く。一見、軽い刑のようにみえるわね。鉱山じゃなく食堂だからね。でもね、実際は違うのよ。

 朝昼は食事の用意。そして夜は、働く男たちをで慰め奉仕する。それが食堂の役割。

 全身全霊がみそよね。つまり、そのための避妊処置よ。両親が犯罪者って可哀想だからね。勿論、生まれて来た子供がよ。

 十年か……たぶん、そこまで保たないわね。精神も肉体も。だけど、刑の執行期間中は生かされる。どんなことをしてもね。鉱山で働く者は皆そうよね。まさに地獄だわ……。

「そうですか……分かりましたわ。義父様」

 内心そんな事を考えながら、口調と表情は変わらす淡々と答える。刑が確定しているのに、私がこれ以上何も言う必要がないでしょ。

 それにしても、アイが手を貸していたことは、我が家にも大きな衝撃を与えることになるでしょうね。外聞的にも内聞的にも。

 領民に信用されていない領主と国母。格好の話題だわ。

 そう噂されても仕方ないわ。だって、アイはグリード公爵家の領土出身者。ましてや、長いこと乳母を勤めていた者の娘だからね。よく言う、乳兄弟だし。当然、アキとその恋人の件がなければ、今もグリード家の皆とは個人的な付き合いをしていたと思うわ。私は遠慮したいけどね。そう考えると内心複雑よね。

「マリエール。刑の執行は二日後だ。一応訊くが、見に行くつもりか?」

 心なしか心配げに訊かれた。

 一応当事者だからね。別に見に行ってもおかしくはないけど。そんな悪趣味に時間を割く程暇じゃないわ。

「興味ありません。なので、わざわざ見に行ったりはしませんわ。義父様は執行に立ち会うのですか?」

「ああ。我が領土の出身者だからな。ケジメとして、参列しないといけないだろう」

 溜め息混じりに、義父様は答える。

 特に参列しなくても非難されないと思うけど。潔いっていうか……義父様らしいわね。でも内心は荒れているんでしょうね。その表情は苦悶に満ちているから。本当に優しい人だわ。義父様って……。

 この時、私はアイの件はこの時点で全て終わったものだと思っていた。

 
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