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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
有言実行です
しおりを挟む「…………呆れますわ」
目の前の光景に、思わずボヤいてしまった。溜め息と一緒に。でも、発せられた声はとても低い。
あれだけの痴態を何度も学園で披露したのに、まだ、阿婆擦れとストーンを応援している人がいるなんて……マジ、信じられない。中には、信者化してる生徒もいる。信者化してるのは、平民の極々一部だけど。でも、それが現実なんだよね。
意外にも、信者化している生徒の半分は女子生徒。まぁ、阿婆擦れが語ったのが真実なら、どんな恋愛小説よりも魅力的だけどね。
そもそも、何で私が、殿下と無理心中したことになってるのよ!! マジそれ聞いた時、腸が煮えくり返って、全魔力で最大級の攻撃魔法を繰り出しそうになったわ。思い止まった私を褒めて欲しい。
逆だわ逆。
私とアレクが恋人同士だったのに、割り込んで来たのは阿婆擦れの方でしょ。権力使いまくりで、私とアレクの仲を引き裂こうとしたから、私たちは……。
まぁ真実はどうであれ、過去世なんて突拍子のない話を信じてるのは、信者化した極々一部。他の生徒たちは夢物語か妄想って思ってるようね。それが普通の反応よ。
だけど、目の前にいる方々はその極々一部の方たちのようだ。
「わっ、私たちは平民だけど、虐げられていい存在じゃありません。もうこれ以上、アイリーン様やストーン君を虐めないで下さい」
私の低い声にビクつきながらも言い放つ女生徒。
リボンの色から一年のF組ね。阿婆擦れと同じクラスか。っていうか、阿婆擦れF組に落ちたの? 試験受けれなかったからね。マジか……貴族でF組はないわ~~。
頭悪い上に、妙な正義感を振り回す。最悪の組み合わせよね。
それに当の本人は、三人の女性徒の後ろに隠れるように私を見ているって。卑怯よね。それも、口元に僅かに笑みを浮かべながら。その笑みは私からしか見えないけど。つまり、三人には見えないってこと。見せたら、そんなこと言い出さないよね。
それにしても、ほんと、阿婆擦れって昔から庇護欲だけは唆るのよね……。
この光景だけを見れば、完全に私が悪役よね。どこをどう見ても、私に庇護欲なんて微塵も感じないもの。十人中十人がそう言うわ。
見た目から、私って悪役よね。嫌になるけど。
「虐める? 私がですか? 誰をです?」
見た目がそうだからって、何で阿婆擦れとストーンを虐めないといけないのよ。私がしたいのはそんな生半可なことじゃないわ。
「とぼけないで下さい!! やり方が卑怯です。アイリーン様やストーン君の家族に手を回すなんて、最低です」
更に女生徒は言い放つ。残りの二人も一緒になって、「最低です」と言い放った。
おいおい、誰にものを言ってるか分かってる? サクヤが貴女たちを排除しようとしてたのを止めてるの分かってる? 分かってないよね。
完全に自分に酔い痴れてるもの。完全に周りの声が聞こえてない。言い逃れが出来ないようにワザとこの場所を選んだかもしれないけど、それって小説の中だけだからね。現実は悪手だよ悪手。
「見に覚えがありませんが。フォード伯爵令嬢とストーンさんの御家族の方に、何かあったのですか?」
首を傾げながら訪ねる。すると、
「とぼけないで!!」
阿婆擦れがそう叫ぶと、ポロポロと涙を流し始めた。
うっわ~~泣き出したよ。でもこれって、計算だよね。引くわ……。
「「「アイリーン様!!」」」
女生徒三人が阿婆擦れを慰める。そして、私を睨み付けた。
「お願いだから、家族を巻き込まないで。悪いのは私なんだから。私とカイン様が運命の恋人同士なのが許せないんでしょ。だから、そんな意地悪をするのね。
……でも、家族は関係ないわ。
優しいお母様がお茶会で無視されたり、リアンの家で取引を解約されたりするのはやり過ぎよ……これ以上、私たちを苦しめないで……」
必死で嘆願する阿婆擦れ。それを、「よく言ったわ」と、背中を擦る女生徒たち。
いやいや。何言ってるの、あんたたち。
そんな四人を冷めた目で見ているのは、私とこの場に居合わせた学生たち。温度差ありすぎだって。
「……私は何もしていませんよ」
勿論私はキッパリと否定する。
「だったら、何で「周りをご覧なさいな」
いい加減面倒くさくなってきたので、途中でセリフを遮る。だって、昼休みの時間って貴重なのよ。こんな馬鹿げたことに費やすのは勿体ないわ。
「なっ、「もう一度言いますわ。周りをよくご覧なさいな」
二度言われて、漸く周りを見渡す女生徒たち。
女生徒たちは言葉を失い黙り込む。やっと気付いたようね。私と周囲の温度差に。
「貴女たちは独りよがりの正義感を振り回して、さぞかし気分が良かったかもしれませんが、本気でそれが通ると考えているのですか?
改めて言いますが、私は何もしていませんわ。
なら、何故、フォード伯爵令嬢とストーンさんの御家族が不快な目にあったのか……答えは私たちの周囲にありますわ。
よくご覧なさいな。そして、耳を澄ませなさい。自ずと答えは出るでしょう。……それでも分かりませんか?」
そこまで言われて、囁かれてる声が聞こえたようだ。女生徒たちは真っ赤から真っ青になる。変わらないのは、阿婆擦れだけ。
益々、周囲の声が大きくなる。居ても立っても居られないようになった四人は、逃げるようにその場から立ち去った。
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