今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第三章 超ハードモードの人生に終止符を

私は誰よりも貪欲なの

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「幼馴染みだそうですよ、マリエール様。アイリーン様と連れて行かれた二人は」

 インディー様が横からコソッと教えてくれた。さすが、暗部兼筆頭従者様。既に調べ済みのようね。

 ふ~ん、そうなの。でも、幼馴染みって……? 

「……カイン殿下から見たら、私とインディー様のような関係ですか?」

 ちょうど女一人に男二人ね。ちょっと違う気もするけど。

「マリエールとは幼馴染みだけど、インディーは少し違うな」

 私の質問に苦笑しながら殿下は答える。

「インディーは初めて会った時から、俺の従者、臣下だったからな。友情とは少し違うな」

 殿下の言葉にインディー様は微妙な笑みを浮かべている。

 改めてそう言われると、確かに違うわね。幼馴染みというよりは、深く強く繋がれた関係性のように見える。まるでそれは、

「それでも、カイン殿下にとってインディー様は大切な仲間で家族なのでしょ」

 幼馴染みというよりは、仲間、家族に近いわね。苦楽を共に歩み助け合う仲間、家族といったところね。とてもいい関係性。どんな宝物より価値があるものよね。あの屑女神には絶対築けないわね。

「ああ」

 そう顔を背けながらも答える殿下。頬が少し赤い。照れてるの? 意外と可愛いとこあるんじゃない。

「そんなに見るな。行くぞ」

 益々頬が赤くなる。なんか凄く新鮮。こんな瞬間、特に思うの。生きてるって素晴らしいってね。こんな殿下を間近で見られるんだから。

 ねぇ、糞女神。人間って貪欲なのよ。

 そしてね、私は誰よりも貪欲なの。こんな殿下の姿を見たら、もっと見たくなるのよ。間近でね。だから私の全力をもって、糞女神、貴女を排除するわ。





 その日、屋敷に帰るなりお父様に呼ばれた。

「只今戻りました。お父様、クライシス」

 呼ばれた理由は分かってる。いきなり本題に入りたいけど、ここは我慢。ほんと、余裕がないわね私。

「ああ。お帰り」

「お帰りなさいませ。マリエール様」

「変わったことはなかったか?」

 お父様が訊いてくる。その台詞、胸が温かくなるんだよね。

「アイリーン様は二週間の停学処分になりましたわ」

「二週間か……退学にはならなかったのか」

 とても残念そうだ。

「次に何か問題を起こしたら退学になるのではないでしょうか」

 まず間違いなくなりそうな気がする。っていうか、私はそれを狙ってるけどね。自滅してくれるよう案内してあげるつもり。

「そうそう、お父様。ストーン商会の息子が掲示板の前で暴れてましたわ」

「ほ~~そうか。ストーン商会の息子がな」

 お父様の声が一段と低くなった。驚かないところをみると、幼馴染みって知ってるようですわ。当然といえば当然よね。

「ええ。でもそれを必死で止めようとしたのが、アイリーン様の義兄様でした。殴られながら」

 少なくとも、あのピンク頭の女のシンパではなさそうだけど……まだ、決定付けるには弱いわね。


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