172 / 354
第三章 超ハードモードの人生に終止符を
当然、抗議させてもらいますよ
しおりを挟む昼休みになりました。
王室専用の場所で殿下と向かい合って座る。殿下の隣にはインディー様、私の隣はサクヤが座っている。もう定位置だね。
「マリエール。あの女の素性が分かったぞ」
座った途端殿下が口を開く。仕事早いですね。
「分かったんですか? ありがとうございます。インディー様」
私はインディー様に礼を言う。
「いえいえ」
満面な笑みでインディー様は答える。
「何故、インディーに礼を言うんだ? 指示したのは俺だぞ」
少し機嫌を悪くした殿下。
気付いてるけど、訂正はしない。私、まだ怒ってるんですよ。あの後死角から出て来た途端、一部の生徒からやたら生温かい目で見られたんだからね。あの死角、そういう意味で使われてるらしい。よりにもよってそこに連れ込むか。そりゃあ、インディー様も怒るよね。サクヤも呆れる筈よ。暫くは話のネタになるに決まってる。仕方ないとはいえ、憂鬱だわ。
「実際、調べたのはインディー様ですよね」
「指示したのは俺だ」
「そうですね。指示ありがとうございます、カイン殿下。……で、あの方はどこの誰なんです?」
サラリと流すと尋ねた。
「フォード伯爵家のご令嬢アイリーン嬢です。今日、編入したばかりですね」
殿下の代わりに答えたのは、インディー様だった。へそ曲げたわね。
「フォード伯爵家にご令嬢はいらっしゃったかしら? 確か記憶では、お子様は男子二人だったのでは?」
「養女らしいです。外で出来た子だとか。引き取ったのはつい最近のようです」
「だから、今年の貴族図鑑に載ってなかったのね。元平民なら、礼儀を知らないのは分かりますが。あれは明らかに違いましたわ。私を敵対視していましたね」
あの目は明らかにそうだった。
「でも何故、マリエール様を敵対視するのです? 初対面ですよね。殿下にしてもそうなのでは?」
サクヤの疑問はもっともね。別に私を疑ってるわけじゃない。
今日は始業式。今日編入したばかりの生徒が、元平民がよ、私と殿下を認識しているのはおかしいでしょ。ましてや、朝にね。サクヤはそこに疑問を感じたのだ。
「それは、おいおい分かるだろ」
殿下の答えに私は頷く。
理由はいくらでも後付け出来るからね。大事なのは、どんな繋がりを持っているかだけ。
「ですわね」
そんなやり取りをしていると、騒ぎ声が聞こえてきた。
「様子を見て来ます」
インディー様がすかさず動く。と同時に、僅かだけどピンク色の頭が見えた。
まさか、ここまでやって来たの!?
マジか。
「ここは王族専用エリアですよ」
インディー様の厳しい声が聞こえた。決して大きな声じゃなかったけど、食堂内に響いたんじゃない。
「そうなんですか~~? でも空いてますよね。下一杯なんです~~。端でいいんでご一緒して構いませんか?」
甘えるような話し方だ。わざと語尾伸ばしてる? だとしたら、計算してるよね。これで騙せる男子結構いるんじゃない。自信満々のように聞こえるもの。
「お断りします。今すぐ下に降りなさい」
当然よね。インディー様に通じるわけないじゃない。
「え~~空いてるんだからいいじゃありませんか」
おっ、更に声のトーンが甘くなったわね。アイリーンって子、鋼の心臓を持ってるんじゃない。完全拒絶のインディー様を前にして臆さないなんて。
「もう一度言います。降りないと、警備呼びますよ」
最終通告だ。さて、どう出るかな。
「…………どうして、そんな意地悪を言うんですか。酷い……私が元平民だからですか」
泣き落としで来たわね。でもそれ通用しないわよ。相手はインディー様だからね。
「知ったのは今ですが。いいですか、ここは如何なる貴族も入ることは出来ません」
「えっ、でも、マリエール様は入ってますよね」
泣き落としどこにいった!?
「当然です。マリエール様は婚約者ですから」
「そんなのズルいじゃないですか」
ズルいときましたか。その言い分だと、インディー様とサクヤも入るよね。でも、私だけ名指しって。宣戦布告と受け取っていいわよね。口元に笑みが浮かぶ。
「ズルくはありませんよ。訳の分からないことを言うのを止めて下さい」
そこまで話した時だった。警備がやって来た。あえなく、アイリーン嬢は捕まり指導室に連れて行かれた。
散々、私の名前を連呼しながらね。
私に悪意があるの見え見えよね。
当然、抗議させてもらいますよ。フォード伯爵家に。
42
お気に入りに追加
5,482
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる