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第三章 超ハードモードの人生に終止符を
当然、抗議させてもらいますよ
しおりを挟む昼休みになりました。
王室専用の場所で殿下と向かい合って座る。殿下の隣にはインディー様、私の隣はサクヤが座っている。もう定位置だね。
「マリエール。あの女の素性が分かったぞ」
座った途端殿下が口を開く。仕事早いですね。
「分かったんですか? ありがとうございます。インディー様」
私はインディー様に礼を言う。
「いえいえ」
満面な笑みでインディー様は答える。
「何故、インディーに礼を言うんだ? 指示したのは俺だぞ」
少し機嫌を悪くした殿下。
気付いてるけど、訂正はしない。私、まだ怒ってるんですよ。あの後死角から出て来た途端、一部の生徒からやたら生温かい目で見られたんだからね。あの死角、そういう意味で使われてるらしい。よりにもよってそこに連れ込むか。そりゃあ、インディー様も怒るよね。サクヤも呆れる筈よ。暫くは話のネタになるに決まってる。仕方ないとはいえ、憂鬱だわ。
「実際、調べたのはインディー様ですよね」
「指示したのは俺だ」
「そうですね。指示ありがとうございます、カイン殿下。……で、あの方はどこの誰なんです?」
サラリと流すと尋ねた。
「フォード伯爵家のご令嬢アイリーン嬢です。今日、編入したばかりですね」
殿下の代わりに答えたのは、インディー様だった。へそ曲げたわね。
「フォード伯爵家にご令嬢はいらっしゃったかしら? 確か記憶では、お子様は男子二人だったのでは?」
「養女らしいです。外で出来た子だとか。引き取ったのはつい最近のようです」
「だから、今年の貴族図鑑に載ってなかったのね。元平民なら、礼儀を知らないのは分かりますが。あれは明らかに違いましたわ。私を敵対視していましたね」
あの目は明らかにそうだった。
「でも何故、マリエール様を敵対視するのです? 初対面ですよね。殿下にしてもそうなのでは?」
サクヤの疑問はもっともね。別に私を疑ってるわけじゃない。
今日は始業式。今日編入したばかりの生徒が、元平民がよ、私と殿下を認識しているのはおかしいでしょ。ましてや、朝にね。サクヤはそこに疑問を感じたのだ。
「それは、おいおい分かるだろ」
殿下の答えに私は頷く。
理由はいくらでも後付け出来るからね。大事なのは、どんな繋がりを持っているかだけ。
「ですわね」
そんなやり取りをしていると、騒ぎ声が聞こえてきた。
「様子を見て来ます」
インディー様がすかさず動く。と同時に、僅かだけどピンク色の頭が見えた。
まさか、ここまでやって来たの!?
マジか。
「ここは王族専用エリアですよ」
インディー様の厳しい声が聞こえた。決して大きな声じゃなかったけど、食堂内に響いたんじゃない。
「そうなんですか~~? でも空いてますよね。下一杯なんです~~。端でいいんでご一緒して構いませんか?」
甘えるような話し方だ。わざと語尾伸ばしてる? だとしたら、計算してるよね。これで騙せる男子結構いるんじゃない。自信満々のように聞こえるもの。
「お断りします。今すぐ下に降りなさい」
当然よね。インディー様に通じるわけないじゃない。
「え~~空いてるんだからいいじゃありませんか」
おっ、更に声のトーンが甘くなったわね。アイリーンって子、鋼の心臓を持ってるんじゃない。完全拒絶のインディー様を前にして臆さないなんて。
「もう一度言います。降りないと、警備呼びますよ」
最終通告だ。さて、どう出るかな。
「…………どうして、そんな意地悪を言うんですか。酷い……私が元平民だからですか」
泣き落としで来たわね。でもそれ通用しないわよ。相手はインディー様だからね。
「知ったのは今ですが。いいですか、ここは如何なる貴族も入ることは出来ません」
「えっ、でも、マリエール様は入ってますよね」
泣き落としどこにいった!?
「当然です。マリエール様は婚約者ですから」
「そんなのズルいじゃないですか」
ズルいときましたか。その言い分だと、インディー様とサクヤも入るよね。でも、私だけ名指しって。宣戦布告と受け取っていいわよね。口元に笑みが浮かぶ。
「ズルくはありませんよ。訳の分からないことを言うのを止めて下さい」
そこまで話した時だった。警備がやって来た。あえなく、アイリーン嬢は捕まり指導室に連れて行かれた。
散々、私の名前を連呼しながらね。
私に悪意があるの見え見えよね。
当然、抗議させてもらいますよ。フォード伯爵家に。
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