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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
本当に私は大馬鹿者だ
しおりを挟む薄っすらと明るくなり始めた時間になって、お父様はやっと屋敷に戻って来た。
無事戻って来たことにホッと胸を撫で下ろす。
私はクライシスとアンナと一緒に、お父様を出迎える。クライシスもアンナも「仕方ありませんね」と、苦笑しながらも許してくれた。ほんと優しい。
「お帰りなさいませ、お父様」
お父様は私を見て吃驚している。
「起きていたのか……」
お父様は私を見て一瞬眉を顰めたが、すぐに苦笑へと変わった。表情の割に雰囲気は柔らかい。
「気になって眠れるわけありませんわ」
私がそう答えると、一言「そうか……」と笑みを深くする。普段はあまりしないが、私の髪の毛をクシャと搔き乱す。撫で撫での最上級だ。
一通り撫で終わると、いつものように抱っこされてそのまま部屋へと運ばれる。
隈が酷くなってる……
抱っこされてるからかな。いつもより距離が近い。だからかな、熊のようなお父様が酷く疲れているのに気付いた。まぁ一芝居打つんだから疲れるわね。でもその割には、隈が酷い。化粧でも隠し切れないくらいに。
……私、本当に馬鹿だ。大馬鹿者だ。
「…………お父様。ごめんなさい」
心配で眠れなかった。なのに私は、一か月以上家をあけていた。それも黙って抜け出した。ましてや、言ったらいけないことを言ってしまった。
「いいか、マリエール。俺はマリエールを実の娘だと思っている。オルガたちと同様にな。
だから二度と、自分を犠牲にするようなことを言わないでくれ。やらないでくれ。グリード家よりも、マリエールの方が大切なんだ」
その言葉は貴族としては駄目なものかもしれない。甘いって言われるかもしれない。だけど、人間として親としては最高の言葉だよ。私って幸せ者だよね。改めて、心からそう思った。だけど……
「…………ごめんなさい」
ーーはい。もう二度としません。
本当はそう言いたかった。お父様を安心させたかった。でも、糞女神を倒すと決めた以上、その言葉は言えない。どうしても……
ごめんなさい。お父様……
「マリエール。少しは寝られたか?」
昼過ぎに起きた私に、お父様が話し掛けてきた。
「はい」
「そうか……よかった」
ニカッと笑うお父様の側に行くと、私はお父様に向かって手を伸ばした。抱っこかと思ったお父様は私の両脇の下に手を伸ばした。
「違います。しゃがんで下さい」
私がそうお願いすると、お父様はしゃがんでくれた。
お父様の両頬に両手を添えると治癒魔法を掛けた。気休めかもしれない。でも少しでも、楽になってもらいたいから。
「ありがとう、マリエール。楽になったよ」
熊さんの笑顔は私を幸せにしてくれる。なのに、お父様の笑顔が消えた。
「……お父様?」
「マリエール。殿下に手紙を書いてくれないか。屋敷で会いたいって」
厳しい表情でお父様が私に頼む。
ポーター公爵家でことを進めずに、グリード公爵家でやるつもりなのね。おそらく、お父様がそうもっていったのね。分かりましたわ。
「すぐに、手紙を書きますわ」
私はニッコリと笑いながら答えた。
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