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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

針のむしろ状態です

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 室内に案内された直後だった。

「マリエール!!!!」

 激しい感情がそのまま声になったかような大声で、誰かが私の名前を呼んだ。

 声がした方向に顔を向けたと同時だった。視界が突然遮られた。そして、全身を強く締め付けられた。

 もしかして、私、抱き締められてるの……?

 どこか懐かしい。その腕の温かみを私は知っていた。今までも何度か抱っこしてくれた。大丈夫だと、心配するなと抱き締めてくれた。この腕に。

「…………お父様……」

 あ~~駄目。泣きそう。

「この、馬鹿娘が!! やんちゃにも程がある!! 心配したんだぞ……無事でよかった…………」

 最後は消えそうな程小さい声だった。耳元でそう告げるお父様の声は、少しだけ震えていたの。抱き締める逞しい腕も。

 心配してくれてたんだ……私を。

 ラング家の血を色濃く引く嫌われ者の私を。

 お父様は心から心配してくれた。普通に娘って言ってくれた。何度も聞いていた言葉だった。だけど、何度聞いても胸が締め付けられるのは何でだろう。熱くなるのは何でかな。

 その言葉を掛けてくれるだけで、私はグリード家のためにどんなことでも出来る。改めて素直にそう思えた。もし正直に思ってる事を言ったら、お父様はなんとも言えない微妙な表情をするわね。その顔を見たいと思うけど、お父様を困らせたくないから言えないかな。

 隣を見たら、私と同じ様に殿下が王妃様に抱き締められている。殿下は恥ずかしのか、必死で逃れようとしてるけどね。なんか微笑ましいよね。

「もういいか? そろそろ座れ。話を詰めるぞ」

 苦笑しながらも安心した声音で、国王陛下が声を掛けてきた。

 詰めるって、ポーター公爵家のことだよね。私もここにいていいのかな?

「どうした? マリエール」

 国王陛下が座るよう促す。

「いえ……私も同席して宜しいのでしょうか?」

 そう尋ねると、国王陛下も王妃様も笑い出した。お父様と学園長は苦笑している。

「今更ではないか」

 笑いながら陛下に言われて、反応に困るよ。だって、本当に今更だもん。でもね、ここで頷く訳にはいかないでしょ。

「しかし、ここからは政治が絡んできます。私のような子供が関わるのは……」

 わきまえなきゃいけない場所はちゃんと弁えるつもり。どの口がそれを言うのって、周りから突っ込まれるだろうけどね。本当にそう思ってるんだよ。

「今回は、マリエールの機転のおかげで防げた案件だ。最後まで見届ける責任があるだろう。
 それに、その方がマリエールとうちの馬鹿息子を監視しやすいだろ」

 後半は本音だよね。うん。自覚はある。監視されるような事、思いっきりしたわね。そう言われたら、何も言えません。

「では、話を進めるぞ。
 先程、暗部が報告してきた。ポーター公爵が偽オルガ=グリードに隷属のブレスレットを使用したそうだ」

 速攻使用したのね。でも、残念だったわね。偽オルガ義兄様は奴隷化しないわよ。だって、オルガ義兄様じゃないもの。奴隷化させるには、本人にブレスレットを装着させたうえ、名前を使い縛る必要があるからだ。じゃなきゃ、この作戦は実行出来なかったよ。実力がある暗部が敵に墜ちることになるからね。
 
 ブレスレットの件を告げた陛下の声はとても低く険しいものだった。同様に、扇で顔を隠しているが、唯一見える王妃様の目も氷のように冷たかった。余程、怒りを胸のうちに溜め込んでいるようだった。

 それは、お父様も同じだった。太腿の上に握り拳を作り、溢れる怒りを必死で圧し殺している。

「では、私は一旦屋敷に戻りましょう。あの下郎が接触してくると思いますから」

「ふむ。そうだな。アヤツの狙いはカインを奴隷化する事だ。それまでは、道化を演じてくれ。ジェラルド」

「畏まりました」

 お父様は一礼すると私を連れて執務室を退室した。

 執務室を出た途端、お父様は私を抱っこする。戸惑う私を無視して王宮内を険しい顔のまま闊歩した。因みに馬車の中でも、私はお父様の膝の上にちょこんと座らされている。逃げられない。抵抗しようとしたら睨まれた。マジ、怒ってる。

 私は冷や汗をタラタラと流しながら、針のむしろ状態のまま、久し振りに屋敷に戻った。




☆☆☆

 今日を含めて、後三日ですね。

【第四回ホラー・ミステリー小説大賞】に参加しています。

 タイトルは〈人喰い遊園地〉です。

 少し古い作品ですが、完結済み。

 恐怖をお楽しみ頂ければ嬉しいですm(_ _)m



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