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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
監視されてるとも知らないで
しおりを挟む急に乗っていた馬車が停まった。
騎士団長が窓を軽くノックする。私は窓を覆っていた布をあげようとした。すると、騎士団長が止めた。
「布はそのままで。誰に見られてるか分かりませんから」
周囲を警戒しているからか、発せられた声はとても小さい。それでも、はっきりと私の耳に届いた。
誰かに見られるって……
それを言うなら、騎士団長や師団長だよ。二人共超がつく有名人だからね。王族以上に民には顔を知られてる。まぁローブを目深く被ってるから、鼻から上は覗き込まないと見えないけどね。
「分かりました。それで、どうしたんです?」
ここは、素直にいうことをきく。
「荷馬車が脇道にそれた」
それた先で偽オルガ義兄様の受け渡しをするのね。だとしたら、そこにポーター公爵がいる筈。
「やっぱり、想像していた通りになりましたね。そこで一網打尽にするのですか?」
少し早いですが、この時点で捕まえたとしてもなんら問題ない。ポーター公爵家が取り潰されることは、既に決定事項たからね。
「いや、まだだ。役者がまだ揃ってないからな。それに、やるなら最高の場所がいいだろ」
当初の計画通りにいくみたいね。まぁ確かに、ここよりも断然いい場所よね……アイツらにとっては最悪な場所になるけどね。
「それで、私たちはどうします? 誘拐犯さんたちを捕まえに行きますか?」
勿論、私たちで捕まえるんだよね。そうだよね。
「……捕まえる気満々だな」
そう言った後、盛大な溜息を吐く騎士団長。さすがに溜息まで聞こえないけど、吐いてるのは分かるからね。
「駄目って言っても、マリエールは聞かないからな。いいよ。俺が許可する。但し、マリエールは俺と一緒にいること。いいね」
渋る騎士団長に殿下からの後押し。ナイスフォロー!!
「はい。分かりましたわ」
最強のお子様二人に、渋々折れる騎士団長。
「じゃあ、早速行こうか。降りて降りて」
反対に師団長は楽しそうだ。
全員馬車から降りると、師団長が認識阻害の魔法を私たち全員に掛けてくれた。
そのまま脇道を慎重に進んで行く。
少し歩くと、開けた場所に出た。この近辺に住んでる人でなきゃ知らないような場所だ。
誘拐犯さんたちの荷馬車が一台。
そして、その場に不釣り合いな馬車が一台停まっていた。
ちょっと離れた場所に身を潜ませてるけど、窓に人影が映っているのが見えた。
どうやら、ポーター公爵は馬車に乗っているようね。アレ? 小柄な影も映ってる。まさか、ディア様も一緒に来たわけ? うわ~~マジか。すっごい執着ね。怖っ。
そんなことを思ってると、呻く声が聞こえた。ほんと、声までそっくり。
偽オルガ義兄様が、無理矢理馬車へと連れ込まれようしていた。抵抗する足と誘拐犯さんたちの足が馬車の下から見える。
等々、強引に乗らされた偽オルガ義兄様。
彼が乗ると、直ぐに馬車は出発した。その馬車には、別の暗部がしっかりと付いている筈。常に監視されてるとも知らないで、計画が順調に進んでる、自分は凄いとか思ってるんでしょうね。声を出して笑いたいけど、それは後日にとっておかなきゃね。
さて、私たちが今しなきゃいけないのは、目の前で大金が入って大はしゃぎしている誘拐犯さんたちを捕まえること。
さて捕まえようと動き出した矢先だった。
私たちは反射的に動きを止める。騎士団長と師団長が瞬時に戦闘態勢に入った。
反対側の茂みから顔を布で隠した男が一人出て来たからだ。
纏っているオーラが普通の人とは明らかに異質だった。暗部に似ているけど暗部じゃない。だって、出て来た男は完全に濁ってる。
間違いない。
ポーター公爵は殺し屋を雇ったんだ。証拠を消すために。
☆☆☆
【第四回ホラー・ミステリー小説大賞】に参加しています。
タイトルは〈人喰い遊園地〉です。
少し古い作品ですが、本編は完結済み。
恐怖をお楽しみ頂ければ嬉しいですm(_ _)m
応援ありがとうございます!
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