今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

準備万端です

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 やっぱり疲れてたみたい。一時間程寝ただけだけど、体が軽くなった気がする。この休みは貴重だよ。下手したら、これから暫くは緊張が続くかもしれないからね。だって、ガッチリ、首を突っ込むつもりだから。

 なので、改めて殿下たちとオルガ義兄様のことを話すために執務室にむかう。その途中、ふと違和感を感じた。

 もしかして、屋敷内の空気が変わった? 

 到着したばかりは、嫌悪感アリアリだったんだけどね。それでも、隠そうとはしてたみたい。まぁ今も、それは大して変わらないけど。でも、何かが違う。

 目が合うと逸らされる。睨まれないだけマシか。

 ここでも、私は悪役なのね……

 もう苦笑しか出てこない。

 何が違うんだろ……? そうか……恐れと嫌悪感だ。二つの感情が入り混じってるような気がする。

 私を案内した侍女の姿を見ないことだし、そこら辺が関係してるかもしれないわね。もしかして、辞めさせられたの? だとしたら、恐れは、お母様やアル義兄様に対してよね。

「大丈夫か? マリエール」

 私が気付くくらいだ。当然、殿下たちも気付いてるよね。殿下は、いつも私を気遣ってくれる。私以上に、私の感情にさとい。敏過ぎる。たまに、それはそれでどうかと思うけど。

「ありがとうございます、カイン殿下。たいしたことではありませんわ」

 それだけ、ラング家が最悪だったってことだから。仕方ないわね。これは諦めるしかない。今更何も言えないし、何も出来ないからね。

 そんな話をしているうちに執務室に到着した。

 インディー様が扉をノックする。入室許可が下りたので中に入ると、既に全員集まっていた。当事者のオルガ義兄様はいないけどね。

「マリエール。ごめんなさいね。貴女に嫌な思いをさせてしまって」

「本当にすまなかった。俺が最後まで案内してれば、こんなことにならなかったのに」

 お母様とアル義兄様が謝る。私にしては、特にたいしたことではなかったんだけどね。

「あの部屋でも十分ですよ。お母様、アル義兄様。だって……屋根があって、雨風が凌げた上、ちゃんとしたベッドがあるんですもの。十分ですわ」

 そう言ったら、とても辛そうな表情をされた。何か言いたそうだけど、私は敢えてそれ以上何も言わなかった。出来れば、この話はお終いにしたい。そもそも私が、ここに来た理由は領地の観光でもなければ、遊びに来たわけでもないんだから。

「……それで、お客様は今どうしているのです?」 

「ギルドに潜り込んで一緒に仕事してるぞ」

 答えたのはアル義兄様ではなく、騎士団長様でした。

「ギルドに? そう簡単に潜り込めますの?」

「冒険者カードがあれば簡単に潜り込めるだろ」

 再び答えてくれたのも騎士団長様だ。

「まぁ確かに、冒険者カードがあれば潜り込めますけど、それなりに足がつくんではないですか?」

 やんごとなき身分の方も冒険者カードを習得することがあるから、自分の素性をある程度隠すことは出来る。出来るけど、全てを隠すことは出来ない。探ろうと思えば意外と簡単に探れる。力と金があればだけど。

 つまり私が言いたいのは、自分の素性がバレる可能性をおしてまでやることだろうかってこと。私なら否だね。幾らお金を積まれても嫌だ。リスクが高過ぎる。そもそも犯罪だからしないけどね。

 まぁ絶対にバレない自信があるなら、話は別だけど。実際はバレてるし。それも早い段階からね。それだけ、お母様とアル義兄様が凄かったってことか……

「それが意外と、巧妙に隠されているわ」

 お母様が告げた。となると、裏の人たちとの繋がりを追うのは無理かもしれない。一石二鳥は狙えないわね。

「……下手に欲張ると、全部が駄目になるかもしれませんね」

「マリエールの言う通りだな。ここは、オルガ一択に絞る方が懸命だろうな」

 殿下の案に賛成です。騎士団長も師団長も殿下の案に賛成した。後はお母様とアル義兄様だけ。

 ん……? どうしたんです? お母様、アル義兄様。鳩が豆鉄砲を食らったかのようなお顔をして。

「それが普通の反応ですよ。マリエール様」

 後ろに控えていたサクヤがソッと教えてくれた。でも、言ってる意味がよく分かんない。首を傾げる私を見て、騎士団長と師団長は苦笑した。インディー様も。

「……それで、いつ動き出しそうなんだ?」

 殿下が尋ねる。

「おそらく、この数日中に」

 答えたのはアル義兄様。完全に把握しているようね。ほんとに凄い。

「間に合うのか?」

 騎士団長が師団長に尋ねる。

「もう到着してるよ」

 到着……? ああ、学園長がオルガ義兄様のために一人部下を送るって書いてあったわね。その人が到着したのね。

 隷属の魔法具が使用される事が分かった時点で、最強の二人は最悪を想定して動き出した。当然だ。といっても、数回手紙を交換しただけだけどね。後はこちら側で詰めるだけ。もうあらかたの流れは決まってるけどね。

 お母様。アル義兄様は不満かもしれないけど、ここはさっさと作戦を詰めましょう。

 まぁ、お母様とアル義兄様の一番の役目はオルガ義兄様を逃さないことだけどね。

「フフフ。話し合いも終わりましたし、準備万端ですわね!!」

 さぁ、来い!! 誘拐犯ども!!




☆☆☆


【第四回ホラー・ミステリー小説大賞】に参加しています。

 タイトルは〈人喰い遊園地〉です。

 少し古い作品です。本編は完結済み。

 恐怖をお楽しみ下さいませ(。•̀ᴗ-)✧



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