今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

私は幸せ者ね

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 殿下の提案で二時間の休憩時間が取れた。

 ちょっとした時間だけど、息がゆっくり吐ける時間が取れてよかったよ。ソファーに座ると、とても疲れていたことが身に沁みて分かる。手足が異様にダルい。目を閉じると、そのまま寝落ちしそう。絶対寝落ちしたら、朝まで起きないわね。欠伸をしながら眠気を我慢してると、サクヤと目が合った。物言いたげな様子で私を見ている。

 途中でアル義兄様が呼び止められたから、案内してくれたのは今控えている侍女だ。

 うん。言いたいことは分かるよ。でも私は軽く首を左右に振る。事を荒げたくはない。とはいえ、お茶も何も用意されないのはね。

 仕方ないわ。軽く溜息を吐いてから、扉の側に控えている侍女に視線を向けると声を掛けた。

「お茶の用意してくれる」

「畏まりました」

 無表情でそう短く答えると、侍女は部屋を出て行く。

 直ぐに侍女は戻って来た。お茶の用意をして。そしてそのまま一礼すると、定位置に戻った。

 そのあからさまな態度に、サクヤは抗議しようとした。

「サクヤ」

 それを私は止めた。思いのほか鋭い声が出たわ。

「ここはもういいわ。下がりなさい」

 侍女を下がらせる。一礼すると、侍女は部屋を出て行く。

「マリエール様。何故、止めたのです?」

 侍女が出て行った途端、サクヤは硬い声で訊いてきた。

「サクヤも渋めでいい?」

 紅茶を淹れるために立ち上がり用意する。念のために鑑定したけど、悪いものは入ってなさそう。お茶の質はかなり悪そうだけどね。ほんとはこんなことしたくないけど、スプーンを持つような感覚でしてしまう。ほぼ無意識で。

 悪い癖ね……

「私が淹れます」

「いいわ。後は蒸らすだけだから、座りましょう」

 古い茶葉だけど多めに使ったから、それなりに飲めるでしょう。それにしても、本当にお茶だけしか持って来なかったわね。

「サクヤ。仕方ないわ。ここで働く者たちの中には、嘗て屑親たちの下で働いて辞めさせられた者が大勢いるのよ。ましてや、オルガ義兄様が再教育を受ける原因になったのは私でしょ。彼らにとって、私は疫病神だわ。まだ、お茶を用意してくれるだけマシよ」

 うん。これなら十分飲めるわね。

「ラング元公爵家とマリエール様は関係ありません。マリエール様は被害者です。オルガ様の件も悪いのはオルガ様自身。嫌がらせを受けるなど、もってのほかです」

 自分のことのように悔しがるサクヤを見て、サクヤに悪いけど私は嬉しかった。

「そうでも、私はあの屑親と血が繫がってるのは紛れもない事実ですから」

 おそらく、ずっと言われ続けるでしょうね。何かしらあるごとに。あの屑親は屑の中の屑だったからね。それもプライドだけは高い、一番嫌な質のやつ。被害者は多いわね。
 
 まだ何か言いたそうなサクヤだが、それ以上は言ってはこなかった。

「おかしいって言ってくれるサクヤが傍にいてくれて、私は幸せ者ね。ありがとう。サクヤ」

 にっこりと笑う私。

「勿体ないお言葉です」

 反対に、何とも言えない顔をするサクヤ。

 その時だった。誰かが扉をノックする。侍女の代わりに開けたのは、勿論サクヤ。

 出迎えたサクヤを見て怪訝な顔をする来訪者たち。室内の様子を見て、目を釣り上げた。

 あ~~一番厄介な人物が来たわ……




☆☆☆

 第四回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリーしています。

 タイトルは【人喰い遊園地】です。

 少し古い作品となっています。

 本編は完結済みです。追加として、クリスマス編を載せたいと考えています。

 恐怖の世界をお楽しみ下さいませm(_ _)m



 
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