今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

ヤキモチ焼き過ぎです

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 いざ、グリード領に行くことが決定しても、食料などの補充をしなくて出発するなんて馬鹿はしない。

 なので買い出しの間、私は大人しくお留守番。因みに殿下も一緒。さっきから、超不機嫌だけどね。そんなにコハクを睨み付けなくてもいいよね。ほんと大人気ない。全くもう。

「マリエール嬢」

 猫じゃらしの草でコハクと遊んでいると、騎士団長が話し掛けてきた。

「どうしました?」

 遊んでいた手を止める。その隙に奪われ、猫じゃらしの草はコハクのものになった。一人遊びするコハクもすっごく可愛いわ。

「ここから、グリード領までは最短ルートで行くつもりだ。出来れば先回りしたいからな。だから、より一層厳しい旅になると思う」

 私を気遣いながら告げる騎士団長。こんな子供にも一人前の人間のように扱う。心から思うよ。騎士団長になるべくしてなった人だって。

 騎士団長の言うことは尤もだと思う。人を攫おうって奴らだ。だから、貴族が使うような道を通りはしないだろう。

 それに、私たちがブレスレットのことを知る前に、ポーター公爵が拉致の命令を出していたとしたら……

 だとしたら最悪だけど、あり得ない話じゃない。そのことも十分考慮したら、最短ルートを行く選択しかないでしょ。

「構いませんわ」

 私は頷いた。

「ほんとに、マリエール嬢は強いな。将来、俺の所で働いて欲しいくらいだ」

 お世辞でもなく社交辞令でもなく、私自身を認めてくれて、評価してくれるのって、本当に嬉しいよね。それも、騎士団長様にだよ。

「それ、どう「ありがとうございます」

 文句を言い出した殿下を遮るように、私はお礼を言った。

「マリエール。俺の扱い酷くないか?」

 ブチブチと文句を言う殿下。

「そうでしょうか?」

 そんな殿下に首を傾げて訊いてみる。

「うっ。そんな可愛い仕草をしても駄目だからな」

 可愛い仕草って何? 

 殿下って、昔からちょくちょく意味不明なこと言うのよね。この時は、サラリと躱すのが一番いい。

「騎士団長様。この件が片付いたら、騎士団の訓練を見に行ってもいいですか?」

 前々から、一度見に行ってみたいって思ってたの。

「勿論」

 爽やかな笑みだわ。さすが騎士団長様よね。同じ美形でも、殿下の笑みって悪役ぽいんだよね。腹黒さが滲み出てるっていうか。私の近くに、爽やかさをもった人は皆無だから、この笑みは貴重だわ。

 それにしても、さっきから外野がやけに煩いんだけど。

「カイン殿下。さっきから何ですか? 私が訓練を見に行ったらいけないんですか?」

「いけないに決まってるだろ!!」

「どうしてです?」

「他の男を見に行くのを止めるのは、婚約者として当然だ」

 いや~~参った参った。そうきたか。

「……カイン殿下。私の歳知ってます? 十歳ですよ。十歳。それに、我が国を護って下さる方たちを応援することが、婚約者から怒鳴らなければならない程悪いことでしょうか?」

 こういう時は、正論をぶちかますのが一番。現に、殿下言葉を詰まらせているからね。

 コハクの事といい、殿下は私に対してヤキモチを焼き過ぎです。たまに、物凄くウザく感じる時もあるけど、嫌ではないんだよね。こんなこと、口が裂けても言えないけど。

 
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