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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
魔鳥と魔猫
しおりを挟む必死で頭を下げ頼む私に、騎士団長が眉を顰めながら言った。
「それは構わないが……さすがに、ジェラルドに話を通さなきゃいけないだろ?」と。
ジェラルドって、お父様のことだ。
十歳の子供が異を唱えるのは生意気だって分かってるけど、私は構わず騎士団長に反論した。
「それは分かっています。騎士団長様が言ってるのが正しいと思います。思いますが、今は時間がありません。
奴らはまずオルガ様を拉致し、自分たちの望み通りに動く奴隷にするつもりでしょう。そして、我がグリード家を脅迫し、殿下に近付き、殿下をも奴隷にするつもりです」
「まぁ、それか、僕たちがいない隙きを狙ってくるか、のどちらかな」
師団長が続けて言った。
騎士団長を除いた全員が、騎士団長に視線を向ける。
「……全く。俺は別に直接話せとは言った覚えはないけどな」
えっ!? それじゃあ。
顔を輝かせる私に、騎士団長は苦笑する。
「実際に戻ったら、誘拐してくれって言ってるようなものだろ」
確かにその通りです。
「そうだな。まず、食堂の映像と音声をジェラルドの所とアルの所に送ろう。マリエール嬢、一筆書いてくれないか。今から、領地に向かうことを」
「分かりましたわ。今すぐ書きますわ」
日記帳の紙とペンがあります。数分で書き終えました。
「早かったね」
「要点と謝罪しか書いてませんから」
私はそう言いながら、師団長に日記帳の切れ端を渡す。師団長は革袋の一つにそれを入れ封を閉めた。それを鷹の首に掛け、入っていないのを、もう一羽の鷹の首に掛けた。二羽はフワリと浮かび、王都に向かって飛んで行った。
二羽の鷹。鷹のように見えるけど鷹じゃない。魔鳥ですね。魔物の鳥じゃないよ。師団長様の魔力で作り出した鳥だよ。だから、本物の鳥じゃない。初めて見たよ。ましてや、この短時間でだよ。凄い。
一定の魔力を練りだして作る。ガラス細工のように壊れやすくて、繊細な技が必要な筈。さすが、王国一の、ううん、大陸でその名を轟かせてる魔術師だよ。作り出す過程見たかった。めちゃくちゃ悔しいよ。
「見てみたいの?」
悔しがる私に、師団長がポツリと言った。思わず、手を掴んで大きく頷いちゃったよ。隣で殿下が、物凄く不機嫌になってるけど、無視。
そう言って作り出してくれたのは鳥ではなく、真っ黒な猫でした。ナ~ゴと甘えた声で鳴いて、体を擦り寄せてくる。
「可愛い!! 貰っていいんですか!?」
「あげるよ。御守り代わりにね」
「ありがとうございます。師団長様」
私は猫を抱き締める。苦しかったのか、猫はスルリと腕の中から脱出し、足場の悪い肩に移動しへばり付いている。だけど、爪はたててないんだよね。
「魔力の塊だからね。普通の猫が出来ない体勢も出来るよ」
首筋に、ピクリと動く耳が当たってこそばゆい。でも、可愛いから全然平気。
「名前付けてもいいですか?」
「勿論」
どんな名前にしようかな? 魔猫だから性別がないよね。可愛い方がいいかな。それとも格好いいのがいいかな。
真っ黒なサラサラした毛並みに、金色のつぶらな瞳……金色……
「決めましたわ。貴方の名前はコハクです」
「にゃ」
返事してくれたんだね。とっても賢いよね。気に入ってくれたようで嬉しいよ。
「コハク?」
師団長が首を傾げる。
「はい。昔、図書室で読んだ本の中に、金色のことをコハク色って言う国があるって、書いてあったのを思いだして。だって、コハクの瞳、とても綺麗だから」
「良い名前だね。よかったね、コハク」
師団長がコハクの頭を優しく撫でる。コハクが嬉しそうにナ~ゴと喉を鳴らした。
ほのぼのとしている私の背後で、ブリザードが吹き荒れている。うん。気付かない振りをしよう。
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