136 / 354
第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
はっきりと見えた標的
しおりを挟む「……仕方ない。少年、ディアに精々感謝し遣えることだな」
「はい」
まるで、ゴミを見るような目で平民の少年を見、心底馬鹿にするような口調で、ポーター公爵は吐き捨て認めた。答える殿下の声は小さい。
吐き捨てる父親に対し、娘であるディア様は優しい目で少年を見詰めながら反論した。見詰められてる少年は、顔を赤らめることもなく無表情だ。殿下だからね。
「お父様。人は見た目や生まれで差別してはいけませんわ。立ち直る機会は誰にでも平等にあると思うの」
はぁ? 相変わらず胸糞悪い台詞を吐くわね。一番差別しているの貴女の方じゃない。上から目線もいいところだわ。
同席している司祭も深く頷いている。
「本当に、ディアは優しいな。なのに何故、殿下はディアを虐げるのだ。昔はあんなに仲がよかったのに。あの悪魔に心を迷わせよって、情けない」
心痛な表情をしながらも、怒りを滲ませ毒を吐き続けるポーター公爵。それを悲しそうな顔をして黙って聞いているディア様。悪魔に心を迷わせた殿下は、まだ無表情のままだ。その無表情が怖いわ。
彼らが言う悪魔って私のことよね。まぁ否定はしないわ。それにしても、ここまで来て私の悪口大会ですか? 暇なことで。
「マリエール様にはマリエール様の良いところがあるのですよ。きっと」
悪魔ってとこは否定しないんだ。ってことは、ディア様自身、私を悪魔だって思ってることよね。ましてや、さりげに良いところが何一つないって言ったわね。
「……そのマリエール様って、そんなに酷い方なのですか?」
ずっと黙って聞いていた司祭が二人に尋ねる。
「実の親を炭鉱送りにして家を潰し、私から大切な友人と殿下を奪いましたわ」
前半は否定しないわ。でもね、先に私を殺そうとしたなのはどっちよ。奪った!? 馬鹿言わないで。罪を犯したから裁かれただけじゃない。
黙って聞いていなきゃいけないのって、ほんと辛いわ。
「それは酷い!!!!」
司祭は嘆く。そして、あろうことか、私が少しでも改心するように神に祈り始めた。
その神の名は女神ディーテ。
美と愛を司る神だ。
そして、私と殿下の敵。
なるほどね。こんな風に繋がるとは考えもしなかったわ。糞女神の名を聞いた途端、怒りを爆発させなかった自分を褒めたいわね。でも、怒りは今も噴火しそうな勢いだ。どうにかそれを押し止めているのは、復讐心だった。
それにしても、こんな所で、まさかその名を聞こうとは思わなかった。殿下と師団長様が調べに行ったのは、おそらくこの教会ね。わざわざ師団長様が調べるくらいなんだから、かなり力を持った教会なのね。なら、殿下は追って来ないわ。私が殿下の立場なら追わないし。
ポーター公爵家の別荘地に糞女神の教会があるのって、偶然とは考えられないわ。必然って考えるべきね。
信仰心を集めて、自分の力を増やすためか……
そこまでして、糞女神がこの世界に干渉するのは、殿下をアレクを手に入れるため。そして、邪魔者である私を排除するためだ。
糞女神の司祭が今ポーター公爵家の別荘にいる。なら間違いない。糞女神とポーター公爵家は繋がっている。
この時、私と殿下の気持ちは一緒だったに違いない。
ポーター公爵家と教会を徹底的に潰すってね。
14
お気に入りに追加
5,482
あなたにおすすめの小説
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

姉妹差別の末路
京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します!
妹嫌悪。ゆるゆる設定
※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった
今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。
しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。
それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。
一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。
しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。
加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。
レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる