今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

はっきりと見えた標的

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「……仕方ない。少年、ディアに精々感謝し遣えることだな」

「はい」

 まるで、ゴミを見るような目で平民の少年殿下を見、心底馬鹿にするような口調で、ポーター公爵は吐き捨て認めた。答える殿下の声は小さい。

 吐き捨てる父親に対し、娘であるディア様は優しい目で少年を見詰めながら反論した。見詰められてる少年は、顔を赤らめることもなく無表情だ。殿下だからね。

「お父様。人は見た目や生まれで差別してはいけませんわ。立ち直る機会は誰にでも平等にあると思うの」

 はぁ? 相変わらず胸糞悪い台詞を吐くわね。一番差別しているの貴女の方じゃない。上から目線もいいところだわ。

 同席している司祭も深く頷いている。

「本当に、ディアは優しいな。なのに何故、殿下はディアを虐げるのだ。昔はあんなに仲がよかったのに。あの悪魔に心を迷わせよって、情けない」

 心痛な表情をしながらも、怒りを滲ませ毒を吐き続けるポーター公爵。それを悲しそうな顔をして黙って聞いているディア様。悪魔マリエールに心を迷わせた殿下は、まだ無表情のままだ。その無表情が怖いわ。

 彼らが言う悪魔って私のことよね。まぁ否定はしないわ。それにしても、ここまで来て私の悪口大会ですか? 暇なことで。

「マリエール様にはマリエール様の良いところがあるのですよ。きっと」

 悪魔ってとこは否定しないんだ。ってことは、ディア様自身、私を悪魔だって思ってることよね。ましてや、さりげに良いところが何一つないって言ったわね。

「……そのマリエール様って、そんなに酷い方なのですか?」

 ずっと黙って聞いていた司祭が二人に尋ねる。

「実の親を炭鉱送りにして家を潰し、私から大切な友人と殿下を奪いましたわ」

 前半は否定しないわ。でもね、先に私を殺そうとしたなのはどっちよ。奪った!? 馬鹿言わないで。罪を犯したから裁かれただけじゃない。

 黙って聞いていなきゃいけないのって、ほんと辛いわ。

「それは酷い!!!!」

 司祭は嘆く。そして、あろうことか、私が少しでも改心するように神に祈り始めた。

 その神の名は女神ディーテ。

 美と愛を司る神だ。

 そして、私と殿下の敵。

 なるほどね。こんな風に繋がるとは考えもしなかったわ。糞女神の名を聞いた途端、怒りを爆発させなかった自分を褒めたいわね。でも、怒りは今も噴火しそうな勢いだ。どうにかそれを押し止めているのは、復讐心だった。

 それにしても、こんな所で、まさかその名を聞こうとは思わなかった。殿下と師団長様が調べに行ったのは、おそらくこの教会ね。わざわざ師団長様が調べるくらいなんだから、かなり力を持った教会なのね。なら、殿下は追って来ないわ。私が殿下の立場なら追わないし。

 ポーター公爵家の別荘地に糞女神の教会があるのって、偶然とは考えられないわ。必然って考えるべきね。

 信仰心を集めて、自分の力を増やすためか……

 そこまでして、糞女神がこの世界に干渉するのは、殿下をアレクを手に入れるため。そして、邪魔者である私を排除するためだ。

 糞女神の司祭が今ポーター公爵家の別荘にいる。なら間違いない。糞女神とポーター公爵家は繋がっている。

 この時、私と殿下の気持ちは一緒だったに違いない。

 ポーター公爵家と教会を徹底的に潰すってね。

 

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