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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

心臓に悪いです

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 騎士団長との話を終えて、ある程度進んだ時だ。

 ジーク以外全員の足が止まった。私たちが急に止まったので、自然とジークが前のめりになる。私の上に倒れそうになったが騎士団長が後ろから肩を掴み、何とか倒れずにすんだ。

「どうかしたんですか!?」

 ジークの声は無視して、私はジッと目の前の空間を見詰める。

「…………魔石による結界ですか……」

 思わず呟いてしまったよ。

 これは厄介ね。まぁ想像はしてたけどね。どんなに平和になっても深い森の中、魔物や肉食の獣、夜盗は絶対いるからね。そういうのから守る備えは必要だ。

 とはいえ、この数と厳重さは只事ではないわ。別荘でこれとは、何かを企んでいると宣言しているようね。

 それとも、私たちをおびき寄せる餌なの。そう勘ぐってしまいそうになる。まぁそれはないけどね。だって、ポーター公爵家の人間誰一人、私たちがここに来てるってことを知る人はいないからね。

 ポーター公爵家が何かを企んでいるかはさておき、下手に解除は出来ないわね。ちょっとしたことで、侵入者を知らせる警戒音が鳴り響く仕組みだ。別荘に近付くには、特定の馬車で入るしかないわね。だとしたら、

「ここは、一旦引き下がるしかありませんわね」

 諦めた訳じゃないわよ。ただ、それなりの準備が必要だってこと。
 
 この結界だったら、認識阻害の魔法でも正直厳しいと思うわよ。精度をかなり上げれば何とかなると思うけど、さすがにそこまで精度を上げた魔法を連打するのはキツイわ。最悪、魔力欠乏症でサクヤが倒れてしまうわよ。

「なら、暫くここで待ったらどうだ?」

 騎士団長がニヤリと笑いながらそう提案してきた。

「えっ!? ここに……? ああ、そうか、ポーター様の馬車を待つのですね」

 インディー様とサクヤの報告で、ポーター様がボラン村にいるって言っていた。なら、必ずここを通るわね。

 この結界を自由に通れる馬車で。

「で、走っている馬車をどうやって止めるんです?」

 ジークが訊いてきた。尤もな質問だ。

「走っている馬の前に獣を放ちましょうか?」

 それが一番無難だと思いますわ。

「そうだな。獣の手配は俺たちに任しとけ」
 
 騎士団長はそう言いながら、ジークの肩に腕を回した。

 計画としては簡単だ。

 放つのはタイミングを違えたら困るので、死体を道の真ん中に置いて置くことにした。狭い道だから、絶対止まらないと通れないしね。

 私たちはそれを木の影に隠れてジッと待っていた。

 二時間くらい経ったかな。やっと、馬車がやって来た。計画通り止まった。御者が死体を脇に退ける。そのすきに、私とサクヤが馬車の屋根に登る。ジークと騎士団長はその場で待機。さすがに全員で行けないしね。ジークはごねたけど。

 馬車には困ったちゃんと侍女、そして少年が乗っていた。

 認識阻害の魔法を掛けているのに、少年が私の方を向いた。偶然でも心臓に悪いわ。

 でも本当に心臓に悪かったのは、その瞬間だった、

 私は思わず声を上げそうになった。慌てて口を押える。声を上げなかった自分を褒めたいわ。だってそこには、まさかの人物が乗っていたんだよ。姿形は変わってたけどね。まず間違いない。
 
 どうして、そこに殿下がいるんですか!!??



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