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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
謝罪されました
しおりを挟む殿下と師団長がボラン村に向かった頃、私はサクヤとジーク、そして騎士団長と一緒に森の中を進んでいた。彼が来てくれてほんとに心強いよ。
でも、私の心は沈んでいた。
てっきり、殿下も騎士団長のように私たちの後を追って来てくれるとばかり思っていた。だけど実際は違った。
ちょっと、ううん、かなりショックだよ。顔には出にくいけどね。
「……色々すまなかった」
まだ立ち直れない私の隣に移動した騎士団長が、そう小声で切り出した。いきなりの騎士団長の謝罪に戸惑う。
「どうして、騎士団長様が謝るのです?」
「……前に、マリエール嬢が獣を捌いてるのを見て、俺とアイツは情けないことに引いてしまっただろ。そうせざる得ない状況だったと知っていたのに。自分が情けない。傷付けたんじゃないかと、ずっと思っていたんだ。だとしたら、本当にすまなかった」
なんだそんなことか。全然気にしてなかったよ。確かに引かれた時はちょっとショックだったけど、ようよう考えれば仕方ないと思うし。だって、仮にも公爵令嬢が獣を捌きながら笑ってる図はね……私も引くかも。
「いえ。お気になさらずに。なんとも思っていませんから。でも、騎士団長様の謝罪はちゃんと受け取りましたわ」
こんな子供に、騎士団長まで登りつめた方が謝罪するなんて思いもしなかった。ただそれだけで、かなり好感度上がるよ。
「…………それとな……アイツのことを嫌いにならないでくれないか」
師団長様のことですね。
「別に嫌いになんてなりませんよ。色々助けてくれた方なのに」
そう答えると、明らかにホッとした様子の騎士団長。
「そう言ってくれるとアイツも喜ぶ。アイツはマリエール嬢のことを本気で気に入ってるんだ。人嫌いで有名なのにな」
ちょっと吃驚です。そこまで気に入られてるとは思ってもいなかった。
だったら、あの場でどうしてあんなことを言ったんだろう。騎士団長様の言う通りの人なら、どうして騎士団長様だけが追い掛けて来たの? 殿下も追い掛けて来ないのも、考えてみれば変よね。もしかして、追い掛けてこれない理由があったとか。だとしたら、納得出来る。
「……師団長様と殿下は、特別な仕事で違う場所に向かわれたのですか?」
スルリと考えていたことが口から出た。一瞬だが、騎士団長の目が見開く。それが答えだった。
「……マリエール嬢。君は本当に聡いな。たまに、同期と話している気分になる」
苦笑しながら騎士団長が言った。
まぁ、前世をプラスしたら騎士団長様より遥かに上だからね。
「何処に向かわれたのですか?」
「ボラン村だ。今は詳しいことは言えないが」
騎士団長は言葉を濁す。
「当然ですわ。有給休暇を利用してまで、師団長様が自ら赴かなければならないのですから、余程のことなのでしょう」
ここまで一緒に来てくれただけで嬉しい。感謝の気持ちで一杯だ。
にっこりと笑いながらそう答えた。すると騎士団長は、さっきと同じ台詞をポツリと呟いた。
「やっぱり、同期と話しているようだ」と。
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