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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
ここまで来てそれはないでしょ
しおりを挟む私たち一行はボラン村のかなり手前で馬車を止めた。
ここから先は特に行動一つ一つ注意しないと。私たちがここにいることは、絶対にバレる訳にはいかないもの。
まずは偵察隊として、インディー様とサクヤの二人がボラン村に向かった。私たちは大人しくお留守番だ。
ボラン村で確かめるのは一つ。
ポーター公爵家に関わる者がこの村に訪れたか、もしくは、別荘に食べ物などを搬入していないかだ。ボラン村以外に近くに村がないからね。別荘に滞在するなら、それなりの物を用意しなきゃいけないでしょ。そして、搬入の多さで大体の人数が把握出来るしね。
一時間程で二人は戻ってきた。焼き立てのパンをお土産に。
早速、皆で頬張る。
美味しい!!
感動だわ。芳醇なバターの香りに仄かな塩味。噛むたびに、口の中でバターが広がる。癖になる味だわ。いくらでも食べれるわ。
「これ、上手いな。今度作らせよう」
「本当に美味しいですね。今度、作ってみます」
殿下と私の感想を聞いて苦笑するのは、インディー様。
「微妙に噛み合ってはいませんが、気に入って頂いてよかったですよ。
そうそう、殿下。マリエール様。今、公爵様の馬車がボラン村に来てますよ」
「どうやら、ポーター嬢が買い物に来ているようですね」
次に答えたのはサクヤだ。
学園をズル休みして、田舎でお買い物ですか。まぁ困ったちゃんが何をしようが構いませんが、当たりでしたね。
自然と口元に笑みが浮かぶ。
「……なら、間違いなく、ボラン湖の別荘に逗留していますね」
もしくは、しますか……
ディア嬢が使うだろうルートと違うルートで来たからね。こちらの方が近道なんだけど、その分危険性が高いから、まず貴族なら安全な道を通る筈。だから、追いつく可能性も十分考えられた。
取り敢えず、追いついたかどうかなんて今はどうでもいい。ディア様がボラン村で確認された以上、この村に寄る必要はないわ。下手に目立ってバレる事なんてあったら、最悪ですまないからね。
「じゃあ、行くか」
殿下が言う。すると、騎士団長が「その前に、この馬車を隠さないとな」と言った。
確かにそうですね。
「見張りも必要だよね」
これは師団長。
「誰が残るかだが。一番無難なのは……」
殿下のその声に、自然と一箇所に視線が集まった。
「俺ですか!? 俺はマリエール様の護衛です。マリエール様から離れる訳にはいきません!!」
ジークが抗議の声を上げる。
「なら、マリエールちゃんも残って「はぁ?」
師団長の言葉を遮るように低い声を上げたのは私です。淑女としては一番駄目な声よね。でも、「はぁ」としか言えないわ。ここまで来て留守番なんてありえない。断固拒否するにきまってるじゃない。
「何を仰ってるんでしょうか? 私の聞き間違いですよね、師団長様」
何も答えないってことは、聞き間違いじゃないんですね。分かりました。
「……いいですよ。ならば、ここで別れましょう。別に困りませんから。お世話になりました。感謝致しますわ。騎士団長様。師団長様。行きますよ、ジーク」
私は師団長に深々と頭を下げた。踵を返すと、そのまま森に入る。
勿論後ろからジークが、その後ろをサクヤが付いて来る。何故か、騎士団長様まで付いてきた。でも止めようとはしない。
「勝手に俺を含められたら困る」
苦笑しながら、騎士団長は言った。
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