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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
どっちが破壊力あるのかな
しおりを挟むうん。
皆引いてるね。見事に。
グロいもんね。分かるよ。でもさ、魔物とか時には人に対して剣や魔法を使ってる人間が、何で引いてる訳?
「…………ほんとに捌けるんだな」
そうポツリと呟いたのは、騎士団長だった。
嘘を吐いたりしませよ。まぁ、公爵家の令嬢が動物を捌いてる姿は珍しいでしょうね。
「子供が満面な笑みを浮かべながら、目を輝かせてナイフで腹を裂き、内蔵を掻き出す姿って、何か怖いものがあるよね」
師団長が頬を引き攣らせながら呟く。
あ~~そういう意味で引いてたんですね。まさか、私の姿に引いてたとは。まぁそうですよね。ここにいる皆さんが、血や内蔵や剥いだ皮に引いたりしませんよね。勘違いしちゃってごめんなさい。
でも、頬が緩むのは仕方ないわ。
「だって、コレ、とても美味しいんですよ。私が前に獲ったのは、もっと小さかったんですけど、その美味しさは今でも覚えてますわ」
ジュルリ。あの味を思い出したら、涎が出てくるわ。頬が緩むの止められない。
「うん。十分にその思いが伝わったから、血が付いたままの手で頬を触らないで。マリエールの頬を赤く染めるのは、俺なんだから」
そう言いながら、殿下が私の頬を拭おうと手を伸ばす。
だけどその手は届かない。だって……あまりの気持ち悪い台詞に、完全に引いてしまったから。体ごと。
その台詞に引いたのは、私だけじゃなかったようだ。全員ドン引きだ。それを見てつい考える。さっきの私の姿と殿下、どっちが破壊力があったんだろって。私だったら、マジへこむわ。
「あれ? マリエールどうしたんだ? ああ、そっか。悪かった。皆がいるから恥ずかしかったのか。気にしなくていいぞ。彼らは只の木だ」
一人で何勝手に納得してるのよ。皆を木にしないでよ。恥ずかしいのは殿下の言動でしょうが。
ほんと、こういう場面になる度に、つくづく疑問に思うのよね。
何でコレを好きになったのかって。
素直に気持ちを口にしてくれることは、恋愛を長引かせる上で重要だってことは分かるわ。その点なら、殿下は十分合格だよ。でもね……大事な心が病んでたらどうなると思う。
もれなく、さっきのような台詞を口にする訳よ。その度にドン引きだよ。
「いや、それはないです。恥ずかしいのはカイン殿下の言動ですよ。それに今は近付かないで下さいませ。カイン殿下まで汚れてしまいますわ」
なので、その度にちゃんと否定しないとね。私まで病んでるとは思われたくないからね。でも、フォローも大事。
「……別に汚れても平気だけどな」
そう言いながら殿下は近付いて来る。何が何でも頬に付いた血を拭いたいようだ。こうなった殿下はほんとしつこい。どうしようか悩んでると、
「マリエール嬢。続きは俺がしよう」
横から助け舟がきた。
騎士団長に解体していたナイフを取られてしまった。万が一を心配してだよね。殿下も師団長に襟首掴まれてこっちに来れないし。ここは任せて逃げよう。ついでに、服も顔も綺麗にしてこよう。
「お願いしますわ。騎士団長様」
御礼を言い、即行馬車の裏側に移動した。着替えるためにね。さすがに浄化魔法でも、血が染み込んだ衣類は簡単に綺麗にならないからね。まぁでも、これくらいの染み私なら楽勝だけどね。
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