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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
普通に答えただけですけど
しおりを挟むポーター公爵家の目が何処にあるか分からない以上、町や村に宿泊するのは危険だ。それに、サクヤやジーク以外は結構有名人だからね。顔を覚えられてる可能性が高いでしょ。だから、旅の殆どは野営らしい。
それは仕方ないって思ってる。
元々、私も野宿するつもりだったからね。泊まるお金ないし、子供一人で泊まると、どんなトラブルを引き起こすか分かんないからね。そんな危険は絶対避けたい。
「マリエール嬢。このような、粗末な寝床しかないが、我慢してくれるか」
騎士団長に済まなそうにそう言われた。そんなことない。毛布もあるし、全然粗末なんかじゃないよ。付き合わせてしまった私こそ恐縮ものだよ。
「いえ、大丈夫です。立派な寝床ありがとうございます、騎士団長様。元々、野宿するつもりだったので、気になさらないで下さいませ」
そう言うと、とても驚かれた。
ん? どうして?
「マリエールちゃん。野宿するつもりだったの?」
師団長も驚いた表情で訊いてくる。
「はい」
何、殿下以外、その可哀相な子を見る目で見るのは。
「野宿ですよ。一人で真っ暗で危険な夜を過ごすんですよ」
何を今更当たり前のことを言ってるの。
「ええ。ジーク、私を馬鹿にしてます? そんなの当たり前ではないですか。夜盗も魔物も出ることぐらいは分かっていますわ」
「では、どうやって対策を。それに食事や水はどうするのですか?」
サクヤが訊いてきた。
「食べ物ですか。食べ物はある程度なら自給自足出来きますわ。つまり狩ればいいし、簡単な野草の区別はつくから食事には困りませんよ。火もおこせますし。水は魔法で出せます」
「……野草は分かりますが、狩りって」
信じられませんか?
「実際に狩ってましたよ。
まぁ、狩ったといっても小動物ですけどね。ある程度なら、自分で捌けますわ。そうでなければ、いくら魔力が人よりあっても、生きていける訳ありませんよ。
それと、図書室にあった魔法書から浄化魔法があるのを知り習得しましたから、衣類の汚れも体の汚れも、その魔法を使えば清潔を保てますわ。
それに、同時に結界魔法を習得しましたから、自分の周りだけなら、どんなものからでも守れます。
屑親がまだ公爵を名乗ってた時から、バンバン使っていましたので、今ではスムーズに使えますよ」
普通に笑いながら答えた。
本当は魔法書から習得してないけどね。
お風呂なんて入れなかったんだもの。絶対必要でしょ。それに、自分の身は自分で守らないといけなかった。
大切な人の死によって前世の記憶が蘇ったんだけどね。これも、あの糞女神の呪い。……内心とても複雑だけど、思い出してなかったら、今頃この世にはいなかったでしょうね。冗談じゃなく生き残っていなかったわ。
「……だから、気配を消すのが上手だったのですね。身体強化の魔法も、狩りのためですか」
ジークが呆気に取られながら呟く。
「ええ」
私は頷く。
気配を消したのは認識阻害魔法だけどね。訂正する気はないよ。インディー様とサクヤがいるし。まぁバレてると思うけど。身体強化は確かに狩りには役に立ったわね。
「甘かったな」
騎士団長がボソッと独り言のように呟く。主語がない。
「この後でも、移動出来るんじゃない」
その声に反応したのは、隣にいた師団長。
「なら、研究所はどうだ?」
これは殿下。とてもいい笑みで提案した。その目は全く笑っていない。光さえ見えない。
うん。黒いわ……真っ黒だわ。
「……サクヤ、ジーク。狩りに行きますか?」
染まりたくないなら、ここから離れるのが一番よね。
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