今度こそ絶対逃げ切ってやる〜今世は婚約破棄されなくても逃げますけどね〜

井藤 美樹

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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

殿下暴走する

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 殿下が私を庇うように抱き締める。そして、インディー様とサクヤに鋭い口調で命令した。

「いいか、二人とも。今すぐ、マリエールの可愛い泣き顔を記憶から消せ! 抹消しろ! いいな」

 うん。

 台詞だけ聞いたら、なかなか危ない奴だよね。

 でも、言った本人は、常日頃から同じような台詞を、頻繁にインディー様やサクヤの前で口にしてるからね、変な説得力あるみたい。

 良いのか、悪いのか分かんないけど、今回は助かったかな。おかげで、涙は引っ込んだよ。ショック療法ってやつね。感謝していいんだよね。微妙だけど。

 インディー様もサクヤもそっぽを向き、見なかったことにしてくれた。

 どうやら誤魔化せそう。今回は無事誤魔化せたようだけど、これから気を付けないとね。まさか、前世に思いを馳せてましたなんて言えないしね。それにしても、こんなに涙腺が弱くなってるなんて思いもしなかったよ。

 涙なんて、当の昔に枯れ果てたと思ってたのに、まだ残ってたのね。これは素直に喜んでいいことよね。

 そんなことを思っていると、殿下が暴走し始めた。抱き締めている手に力を入れて、熱い目で私に甘く囁く。

「……ほんと、いつもいい匂いだよな、俺のマリエールは。俺の可愛い可愛いマリエール。今晩、君の夢に遊びに行くよ。だから、笑って。泣き顔の君も可愛いけど、笑ってる君が一番可愛いから」

 何度可愛いって言った? 

 さらりと危ない発言ぶち込んでない?

 マジで言ってる? 寒い。寒過ぎるわ!! 匂いを嗅ぐな!! 全身に寒イボが出たわ。

 伝えたいのは「」ってことでしょう。普通に告げるのは言い難いなって思うけど、それを差し引いてもさっきの台詞はないわ。変態だよね。うう……まだ寒イボ消えないよ。

 その場の空気が完全に凍ってるのを無視して、殿下は一人突っ走る。

 インディー様もサクヤも、もはや景色。殿下の目には一切映らない。なので、こうなる訳。

 頬をスリスリしないで。腰に手を回さないで。これ以上密着しようとしないで。

「でっ、殿下近いです!! 少し離れて下さい!!」

 慌てて押し退けようとしても、抱き締められたままなので、僅かに隙間が広がるだけだ。却ってそれが恥ずかしい。

「そうかな? 俺はそう思わないよ。マリエール、名前忘れてる。だから、これは罰だ」

 殿下はそう告げると、私を器用に自分の膝の上に乗せた。横抱きに。

「次の休憩時間まで、ずっとこのままでいること」

 息が掛かる距離でそう告げる殿下。

 十三歳の子供がする行動じゃありません。

 お願い!! 誰か、殿下の暴走を止めて~~

 

 
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