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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
平和な世界。共に歩けなかった未来。
しおりを挟む王都から馬車が離れる程に、景色は長閑なものへと変わっていく。
家畜を飼育する牧草地もあったりして、ほんとに平和なんだと思う。だって外に牧草地なんて、魔物にタダで餌をやることと同じだからね。
これも皆、アレクたち勇者一行が命を掛けてもぎ取った平和だ。
そして、その平和を次代に引き継いで来たのは、間違いなくその時代に生きた人たちだ。私は途中で逃げ出したけどね。
王都を出てからも道が綺麗に整備されている。さほどの振動もなく馬車を走らせることが出来る。ほんと、この国の力の大きさを知ることが出来るよ。これも皆、大勢の人の思いが引き継がれ、頑張ってきた結果なんだと、私は思う。
見れば見るほど、昔とは全く違うわね。
家畜を村の外で飼育することなんて、まず出来なかった。村や町の外に出るのは、死を覚悟する必要があったぐらいだったしね。時には、村や町にいても危険だった。大袈裟でなくてね。魔物や野盗が襲ってきたし。常に危険と隣り合わせの生活を、私たち人族は強いられていた。
そんな世界で、私とアレクは一生懸命生きていた。
そして、出会い、愛し合って……二人で生きる未来を夢見ていた。そんな未来は来なかったけどね。当時の国王陛下があんなことを宣言しなければね……
「…………マリエール?」
小さな声で殿下が私の名を呟く。
知らず知らずに、私は殿下の手を握っていたみたい。殿下が私に視線を向けている。だけど私は、外の景色を見続けたままで、殿下に視線を向けなかった。向けれなかった。代わりに、握っていた手に力を込める。
それが、私が今出来る返事だった。
殿下も口を閉ざし握り返してくれた。
私の隣にいるこの人は、この景色をどんな思いで見ているんだろう。
あれから何度も何度も生まれ変わっては、アレクに殺されて。もう数えるのも億劫になって。何度も裏切られても、アレクを嫌いになれなくて、ただただ苦しくて、だけど、交わした約束はしっかりと覚えてて。それが更に自分を縛って苦しめて。
それは、今も同じだけど。
前ほどは苦しくはないわね。色んなことを知ったから。
今回はあの約束、守れるのかな……
「えっ!? マリエール様!! いったいどうしました!?」
「なっ!? いきなり泣き出してどうした!?」
サクヤとインディー様が騒ぎ出す。
……えっ? 私泣いてるの?
目元に手を伸ばすより早く、殿下が私を抱き締める。そして、向かいに座るサクヤとインディー様に向かって声を荒げた。
「見るな!!!!」と。
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