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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
そうとしか答えようがないわ
しおりを挟む「何があった?」
執務室にサクヤと入った途端、眉間に皺を寄せ厳しい表情のままお父様は開口一番尋ねる。お父様の視線はサクヤに向けられ、次に私に焦点を合わせる。
サクヤの正体はお父様には知らせていない。だが口にしなくても、自ずと分かるだろう。ましてやお父様は、学園長の親友でもある。
「クライシスも一緒に」
私を通し、執務室を出ようとするクライシスを呼び止めた。クライシスの力が必要になるのは目に見えていたからね。
クライシスが一旦お父様に視線を移し、お父様が頷く。
「それで、何があった?」
改めてお父様が尋ねる。私は学園長から渡された手紙をお父様に渡す。それに目を通すお父様。段々その顔が、険しくなっていく。
「そうか。とうとう動き出したか」
手紙から顔を上げたお父様は、眉間に皺を寄せながらも口元には笑みを浮かべていた。私に確認する。
「はい。この時期に、旅をなさるそうですわ。行き先も旅の理由も、まだ、はっきりとしたことは分かりませんが。休学届け出が学園に出されてないので、近場なのは間違いありませんね」
「当然、場所は絞れてるんだろうな?」
「はい」
おそらく、湖の近くにある別荘ね。
「それで、あいつは俺に何をしろと?」
「書いてありませんか?」
「マリエールに訊けって書いてある」
大事なことはこっち任せって……まぁいいわ。
「至急、領地に連絡を。オルガ義兄様の監視をお願い致します。但し、誰にも悟られずに。監視だけをお願い致します」
だから、クライシスを同席させたのだ。秘密裏に監視するのに、クライシスの配下の力がどうしても必要だからね。
「監視だけか……」
そう小さな声で呟く声を聞いた。お父様にとって、オルガ様は大事な息子だ。心配して当たり前だし、何かあっても手を出せないのは辛いだろう。酷なことを言ってる自覚はあるよ。
ほんと、私って親不孝よね。だって、お父様の大事な息子を囮に使うって、言ってることと同じなんだから。
この沈黙が痛い。
「何故、オルガを?」
暫く押し黙った後、お父様がポツリと呟く。
「それも書いていませんか?」
そう尋ねると、お父様がなんとも言えない表情をしながら言った。
「いや……書いてはあるんだが、本当なのか?」
まぁそう思いたい気持ちも分かるわ。自分の息子を想う娘がアレって、親としては複雑よね。素直に喜べないもの。それに二股だし。
「ポーター様がどう想っているのかは分かりませんが、殿下とオルガ義兄様にご執心なのは確かですわ。そう発言したのを私以外も聞いてましたから」
嘘は言ってないわよ。大袈裟でもない。クラスメートの前で、殿下とオルガ様を救うと宣誓しましたからね。
「殿下は分かるが、何故オレガを?」
正反対だもんね。殿下とオルガ様は。殿下は頭で動くタイプ。でもオルガ様は本能で動くタイプ。属に言う脳筋だ。
「それは私に訊かれても。正反対のタイプなので、両方とも興味を持たれたのではないでしょうか」
そうとしか答えようがないわ。私も分かんないし。
☆☆☆
第十四回恋愛小説大賞にエントリーしてます。
気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧
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