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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

提案しました

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「で、どうするつもりだ?」

 王妃教育が終わった後、早速殿下は私を捕まえ尋ねてきた。インディー様も一緒だ。

 今日は真っ直ぐ帰りたかったんだけどね。読み掛けの本を読みたかったから。でも、仕方ないか。今日、あんな宣言されたからね……全く、面倒くさい。

「何もしませんよ。面倒くさいじゃないですか」

 正直に答えた。

 何、その顔? まさか、私が何かするとでも思ってたの? あり得ないわ。

「いや、レーアやユーリに手を出すなって言っただろ? 自分が対処するって」

「ええ。確かに言いましたよ」

「それって、自分でやるからじゃないのか?」

「まぁ、取りようによったら、そう言えなくもないですよね。ご期待に添えませんが、自分から行動するつもりはありませんよ」

「じゃあ、放っておくのか?」

 さっきから、疑問系ばかりね。

「……本音を申しますと。

 ご丁寧に宣言してくれたのだから、こちら側も丁寧に応対すべきだと思います。が、言ったら悪いですが、なんか私も困ったちゃんに見られるような気がしまして……」

 が、を敢えて強く言った。

 返答がないってことは、納得して頂いたようです。

「正直言えば……今までの言動が酷過ぎましたわ。

 人の話は聞かない。自分の意見を押し付ける。反論すれば、涙目で「酷い!!」と言い、相手を平気で悪者にする。まるで、自分こそが正義で、愛されてる存在だと信じているようで、気持ち悪いですわ。出来るならば、同じ空気も吸いたくはありませんわ。

 ……殿下の幼馴染ですけど」

 殿下自身、困ったちゃんから一線を置いている。今は完全に避け、関わりを持たないようにしている状態だ。本気で毛嫌いしている。

「昔はそこまで酷くはなかったんだが……」

「昔は昔。今は今です」

 即座にキッパリと切り捨てる。

「マ、マリエール、怒っているのか!?」

 殿下が急に慌て出した。

「怒ってませんよ。殿下の気持ちを全く疑ってはいませんから、安心して下さい」

 そもそも、疑う程、短い付き合いではないでしょう。

「なら、いいが……」

 本当に怒っていないので、その傷付いた子犬の目は止めて下さい。
 
「なので、今後一切、困ったちゃんと接触するつもりはありませんわ。色々、自分勝手な噂をたてられそうですけどね。その点はおそらく大丈夫ですわ。現状、信じ切るのはごく一部でしょう。

 問題はその後ですね。

 必ず、なんかしらの問題行動を起こすと思いますよ。そこで、止めを刺すのはどうでしょうか?」

 そう提案しました。

 殿下は良い案だと言ってくれたけど、インディー様は若干引いている様子だ。

「……マリエール様。本当に十歳ですか?」

 そう訊かれて、私は何も答えられなかった。言葉が見付からない。すると、

「インディー、一回死のうか?」

 殿下がユラリと立ち上がる。後退るインディー様。

「マジで殺す気か?」

「当然」

 ニッコリと笑う殿下。反対に顔を引つらせるインディー様。

「た、助けて下さい!! マリエール様!!」

 インディー様が私の背後に逃げてきた。

「殺気をお仕舞い下さい、カイン殿下。インディー様は間違ったことは言ってはいませんよ。

 正直、自分でも思いますもの。

 私のような十歳児がいたら気味悪いですわ。完全に引きます。そんな私と普通に接してくれる皆に感謝しないといけませんよね。インディー様」

 ニッコリと微笑みながら、インディー様を庇う。そんな私に、殿下は少し口を尖らせ訊いてきた。

「やっぱり、殺したら駄目か?」

「駄目です。絶対に駄目です。もし傷付けたら、悲しく思います」

 断固反対したわ。だって、インディー様は殿下にとっても私にとっても、大切な存在だからね。

「インディー。マリエールに感謝するんだな」

 どうやら、インディー様は殺されずにすんだようだ。

 




「……マリエール様。ポーター様がこの先に」

 逸早くサクヤが教えてくれた。

 私は迷うことなく踵を返す。始めから関わり合うつもりはないからね。例え遅刻しても。

 マジ、サクヤには感謝だわ。サクヤの協力のおかげで、徹底的に困ったちゃんを避け続けることが出来たんだから。

 ずっと避け続けたある日、困ったちゃんが学園を休んだ。その次の日もーー。



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