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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
宣戦布告されました
しおりを挟むAクラスからSクラスは校舎が違うので、移動にはそれなりに時間が掛かる。私がいつも使う最短ルートなら五分程かな。でも、足腰が強くなかったらもっと掛かると思う。階段が多いルートだからね。階段が少ないルートを選ぶのなら、遠回りして八分は有に掛かるかな。走ったり、早歩きしないから。
休憩時間が二十分だから、往復でギリギリ。途中トイレに行ったら、往復だけで終わるわね。通常の令嬢なら。
だから、休み時間は絶対来ないって思ってたんだよね……甘かったわ。何でそこにいるの? 後十分で授業始まるわよ。頬が引きつるわ。
ましてや、クラスメート越しに叫んでるし。
「マリエール様にお話があります!!」って。
マジ、行きたくないわ~~。
「マリエール様。お顔が残念なことになっていますよ」
耳元でそう教えてくれたのはインディー様だ。
ヤバイヤバイ。素が出てしまったわ。口元を引き締めないと。瞬時に、貴族の顔へと戻る。その時間は数秒。
「そこで何をなさっているのですか? ポーター様」
意識的にやや低めの声を発しながら、私は教室の出入口に向かった。クラスメートが止めなければ、勝手に入って来てたに違いない。
「マリエール様にお話があって来ました!!」
同じ台詞を繰り返し言うディア嬢に、心底呆れると同時に苛々してきた。でも、表には出さないわよ。
「私にはないと以前言いましたが。覚えていらっしゃらないのですか?」
Aクラスなんだから、馬鹿ではないわよね。朝言ったこともう忘れたの? 忘れたから食堂でも騒いだんだよね。
「お時間がないと仰ったので、参りましたの」
今から話そうって言うの!? 私に授業をさぼれって。マジ、ありえないわ。自己中もここまでくると、なんか可哀想になるわ。
この場にいる全員も呆れた表情でディア様を見ている。殿下なんて、笑顔のまま殺気を放ってるわよ。背中寒いって。
「呆れたわ……」
「ほんと、呆れましたわ」
レーア様とユーリ様がこの場にいる全員の気持ちを代弁した。私は内心溜め息を吐きながら告げる。
「間もなく、次の授業が始まりますわ。さっさとお引き取り下さいませ」と。
「ならば、いつ話せますか!?」
ほんとに、しつこい。うんざりだわ。その甲高い声を聞くのも苦痛だわ。
「何故私が、わざわざ友人でもない貴女のために、貴重な自分の時間を割かなければならないのですか?
……それと、再度言いますが、私のことを名前で呼ぶのは止めて頂けますか。ポーター様」
なので、再度はっきりと拒否の言葉を口にする。冷たい視線付きで。
すると、例の如く、「酷い!! なんて冷たい方なの!!」と非難し、その場に座り込むと泣き出した。金魚の糞のように引っついていた女子学生二人が駆け寄り、私に非難の目を向けた。
一緒になって文句を言わないところをみると、そこまで馬鹿じゃないようね。でも、一緒にここまで来るんだから、馬鹿なのは間違いないわ。見る限り嫌々じゃなさそうだし。嫌々付き合ってるなら、私に非難の目を向けたりしないでしょ。
この場にいる全員の目が、怒りと哀れみの目で見られてるのに気付かないなんて、貴族社会で生きていけるのかしら。まず、無理ね。私の知ったことじゃないけど。
「マリエールの貴重な時間は、マリエールと私のためにあるんだ。君たちのものじゃない」
一際甘い笑顔で殿下は告げる。私の肩に手を置きながら。まるで、わざと見せつけようとしているように。
途端に悔しがるディア様一向。
まだ、殿下のことが好きなのね。歯軋りが聞こえそうだわ。
そう思った時だった。チャイムが鳴る。
私と殿下はディア様たちに背を向けた。その背中に向かって、ディア様が訴える。
「マリエール様。私は決して諦めませんわ。絶対に、殿下とオルガ様を救ってみせますから」
そうディア様は言い放つと教室へと戻った。廊下を走ってね。見事な健脚だったわ。彼女なら、最短ルートでも大丈夫そうね。
まぁでも、どんな健脚でも完全に遅刻よね。
それにしても、救ってみせるね……
言葉にされたのは初めてね。私に対して宣戦布告ですか。勿論、受けるわよ。
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