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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

心が折れる音がした

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 ユズの証言に、オルガ様は立つことも出来ないようだった。両膝を床に付き、言葉さえ発することも出来なさそう。今は。少し前は違ったけどね。

 自分が聞いてた話と全く違うから、始めは反論しようとしたみたいだけど、反論出来なかった。封じられたって言った方が正確ね。反対に、この状況下で反論しようとした気概に感心するわ。まぁ……加害者に近いディア様からの話だけを鵜呑みにするお馬鹿さんだからね。仕方ないかな。

 そもそも、既に調査がなされ、裏がとれた上で確定した事実に反論出来ると普通考える? 無理に決まってるでしょ。だって、オルガ様の言うことはただの感情論だしね。まるで子供の言い分だよ。ヤレヤレ。義理の兄じゃなかったら、間違いなく敵候補の一人だよ。

「ーーオルガ様。私たちは、マリエール様に救われたのです。

 本来なら、私は罪人として処罰される筈でした。

 例え、家族を人質にとられ脅されたとはいえ、私がしたことは殺人未遂です。只の悪戯では済まされません。その域を完全に出ています。

 私は構わない。自身が罪を犯したのだから。でも、弟と妹は関係ありません。でも、世間は違う。どんな理由であれ、罪人の家族として差別をされ生きて行くことになる。私は最も大切な存在に重い枷をかすところでした。

 でも……マリエール様が、私たち家族に居場所をくれました。その恩は、一生働いても返せません。

 私はこの命がある限り、いえ、来世においても、永久にマリエール様に忠誠を誓っております。

 なので、マリエール様が伯爵家を潰すために、私に目を付け退学にしたわけでは決してありません」

 ユズはそう締め括った。その姿は凛としていて、完全にオルガ様を圧倒していた。

 背負ってるものの重さが全然違うからね。それに、自分を持ってる。芯が通ってるっていうのかな。そんな人物に、只流されているだけのオルガ様が勝てるわけないよね。

 でも……オルガ様のことは別として、ユズの気持ちは嬉しかった。ただ、来世までって言うのはちょっとね。私に関係なく、来世は自分の人生を歩んで欲しい。心からそう思った。

 だから、正直にそう伝えたら跪かれた。まるで騎士が忠誠を誓うように。

「これは、私の意思です。私は貴女様の言葉に救われました。私は騎士ではありませんが、マリエール=グリード様に忠誠を誓います。これからは、マリエール様の手足となって働きます」

 さすがに私も、ユズの想いには驚いた。

「……いいのですか? 困難な道のりですよ。時には、悪意に晒されることもありますよ。それでも構わないのですか? ユズには大事な家族がいるでしょう。だから、考え直しなさい。その想いはちゃんと受け取りましたから」

 そう説得しても、ユズは折れなかった。

「大丈夫です。あの子たちも応援してくれますから。断られても、私の主はマリエール様だけです」

 その目に一点の曇もなかった。意志の強い目が私を見詰める。

 ……完全に私の負けね。

「……分かりましたわ。これから、宜しくね。ユズ」

「はい」

 ユズの返事に笑みが浮かぶ。とても嬉しかったから。

「ーーオルガ」

 ずっと黙っていたお父様が義兄の名前を呼ぶ。その声はとてもとても低いものだった。

 オルガ様の虚ろな視線がお父様に向く。私もお父様に視線を向けた。笑みは消えている。

「お前は、マリエールを寄生虫だと蔑み、ゲスだと罵った。この場においても、最後まで自分の意見を変えようとはしなかった。

 そんなお前に、ユズのような忠臣はいるのか?」

 怒鳴るわけでもなく、固いが静かな問い掛けに、オルガ様は何も答えることは出来ない。

 ただ……その目は誰よりも雄弁だった。オルガ様の目から光がなくなっていく。心が折れた音がしたーー。



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