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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります

私が行きましょうか

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「まず、人質の保護よね」

 そうでないと、ユズさんをこちら側に引き入れることは出来ない。保護することも、私の侍女になることもね。

「人質がどこに閉じ込められているか、調べるのが先決だな」

 殿下の言う通りだ。

「人を閉じ込められる場所って限られてるけどね」

 インデー様が告げる。

 確かに。泣き叫ぶ声って、思いの外響くのよ。普通の部屋に閉じ込めることはまず無理ね。

「そうですわね。インデー様の言う通りですわ。地下室か隠し部屋か……人を隠すのなら、隠し部屋よりも地下室の方が気付かれずにすみますよね」

 それに隠し部屋って、金庫や重要書類を隠すのに適してるイメージよね。

「マリエール様もそう考えますか」

「では、インデー様も」

 どちらからか分からないけど、フフフと笑い声が漏れる。

「インデー。マリエールは俺のだから手を出すなよ。出したら、お前でも許さない」

 意外と仲がいい私とインデー様を見て、気に食わない殿下はインデー様に鋭い視線を向けながら言い放つ。

 はぁ~~!? 何言ってるの!? よりにもよって、私がインデー様と。ないない。どこに、そう思わせる要素があったのよ!? ありえないでしょ。開いた口が塞がらないわ。

「手出すわけないじゃん。俺、まだ死にたくないからね」

 一応従者だよね。それ、側近の台詞じゃないわ。でも飾らないところが信用出来る。

「カイン殿下。変なことを言って、インデー様を困らせないで下さい」

 そう注意すると、殿下の機嫌が一段と悪くなった。子供か。あっ、子供だわ。

 そんな殿下は無視して話を元に戻す。

「問題はどうやって潜り込むかですね……」

 そう呟くと、護衛さんが淡々と答えた。

「それは問題ありません」と。

 ほんとに?

「見つけ出して連れ出すことも?」

「はい」

 表情一つ帰ることなく、護衛さんは答える。
 
 暗部に属する彼女なら難しくはない仕事だと思う。認識阻害魔法も使えるし。だけど、もしも何かあった時に一人じゃ対処が出来ない。だったら、

「護衛さんにお願いしましょう。但し、私も一緒に行きますわ」

 以前の私なら、屑親と殿下から逃げ出すことに必死だったから、暗部の方たちの前で魔法を使うことは極力避けていた。だって、いいように使われるのは嫌でしょ。だけど、今は魔力を持っていることも魔法が使えることもバレてしまった。なので今となっては、特に隠す必要はないよね。とはいえ、全部をさらけ出すつもりはないけどね。

「「「はぁ!?」」」

 三人とも同じ反応だよ。仲良しだね。少し焼けちゃう。珍しく護衛さんの眉間に皺が出来ている。プライドを傷付けちゃったかな。

「そんなにおかしなことを言ったかしら?」

 首を傾げる。

「おかしいだろ!! 何でマリエールが一緒に行く必要があるんだ!?」

 殿下が真っ先に反対してきた。まぁ反対されると分かってたけど。

「護衛さんの力を信じてないわけじゃないわ。それは始めに言っときます。ただ……何かあった時、対処出来る人間が必要になります。表立って行動出来ない以上、行動に移せるのはこの場にいる四人だけ。殿下に何かあっては困るから、実質動けるのは私を含め三人。その中で、認識阻害魔法が使えるのは何人いますか?」

 護衛さんは使える。なら、後一人は? インデー様か私になる。

「……なら、俺が行くしかねーよな」

 心底面倒くさそうにぼやくインデー様。

 やっぱりインデー様、認識阻害魔法使えたのね。使えるかもとは思ってたけど。だってインデー様、暗部の教育受けてるよね。偶に、気配完全に消して現れるから。考えてみれば、殿下と常に一緒にいるんだもん、従者だけど護衛の役割も果たしててもおかしくはないよね。

「なら、私が行きましょうか? 私が言い出したことですし」

 全然構わないわよ。始めからそのつもりだったし。

 すると、苦虫を噛み潰したような苦々しい表情をしながら、インデー様はやや乱暴な口調で言った。

「それ許したら、完全に俺の首飛びますから。比喩ではなく物理的に。マリエール様は俺を殺したいのですか」と。

 まさか大袈裟なと思いつつも、

「インデー様に死なれたら困りますわ。それに悲しいですわ」と正直に答えた。

「なら、大人しく殿下と一緒に待っていて下さい。くれぐれも何もしないように」

 念を押されたよ。

「分かりましたわ」

 そこまで言われたら、そう答えるしかないじゃない。それに、インデー様に死なれたら大変なので、ここは素直に甘えることにしたよ。実際、プロに任せた方が安心だしね。

「「では、行ってまいります」」

 護衛さんとインデー様は軽く頭を垂れると、部屋を出て行った。

 大丈夫だと信じながらも、私は心の中で二人の無事を祈り続けた。




 
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