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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
頼まれました。でもこれは命令です。
しおりを挟む学園長室に招かれた私たち。何故か殿下も一緒だ。改めて殿下の従者になったインディー様も、さっきから空気になって部屋の隅にいる。
気持ちは分かるけどね。この人たちの間に割って入れないわ。ていうか、入りたくない。出来るなら、私も空気になりたいわ。絶対無理だけど。
因みにインディー様は殿下の乳兄弟で、結構いい性格をしている。会った回数は少ないけどね。まぁこれくらいの性格じゃないと、殿下の相手はまず出来ないよね。そうそう。彼は殿下の秘密を知っている。乳兄弟だから当たり前か。そんなことを考えている間も、殿下と学園長のじゃれ合いは続いている。
「いつまでも俺を子供扱いするな」
殿下が学園長の手を邪険に払いのけながら文句をたれていた。でも、心底は嫌がってない。
そもそも、マジで嫌なら殿下は一切近寄らないし、近寄ってもその対応は氷対応な筈。でも大概の人は、その氷対応にコロッと騙されるんだけどね。
どう見ても、先生と生徒の距離感じゃないわ。
「マリエール。学園長と殿下は叔父と甥の関係だ」
お父様がコソッと教えてくれた。
ということは、学園長は陛下の弟なの!? どう見ても兄じゃないよね。でも、ファーストネームが違う。ああ……そうか。学園長は……
「叔父と甥といっても、私は庶子だから、そんなに固くなる必要はないよ。マリエール嬢も私の姪になるわけだから、甘えてもいいんだよ」
ニコニコと笑いながら学園長は仰る。
いやいや。無理でしょ。それにまだなったわけじゃないし。お許しが出たからって、態度を軟化するなんて普通出来ないでしょ。そこまでメンタル強くないわ。……仕方ない。ここは聞かなかったことにしよう。
「……学園長。先程は助け出して頂きありがとうございます」
取り敢えず、出だしはこれで。一番無難でしょ。まぁ助けてくれたのは事実だしね。ほんと助かったよ。学園長の登場で場の雰囲気がガラリと変わったからね。それも好意的な方に。
少なくとも、それなりに学力と知識量の多さを、その場にいる人たちに示すことが出来た。これはとても大きいよ。学園長の「私が一本取られた」って言葉が一番の効果だったと思う。周囲の空気が明らかに変わったからね。
「いや、私は事実を言ったまでだ。特別なことは何一つ言ってはいない。マリエール嬢、自分をもっと誇りなさい。君は自分の実力でSクラスを勝ち得たのだから」
微笑むと、どことなく殿下に似てますね。
「はい。ありがとうございます」
私も自然と笑みを浮かべ答えた。
お父様とお母様は私と学園長の会話をニコニコしながら聞いている。二人は学園長と友人だって聞いたけど、かなり親密そう。
「ところで、そんな頑張り屋のマリエール嬢に、どうしても頼みたいことがあってね」
来たぞ。来たぞ。
ただの世間話で終わる筈ないよね。なんか嫌な予感がするんだけど。
「出来ればマリエール嬢に、新入生代表の挨拶を頼みたいのだが」
マジですか……
「私には無理です!!」
ここはきっぱりと拒否します。
「それでもお願いしたい。君がトップ合格なんだ」
グイグイ来ます。
だとしても……出来ればお断りしたい。
「断りたい気持ちも分かるが、断ることは出来ないよ。これは我が学園の伝統だからね」
どうやら断るのは無理そうです。頼みじゃなく、これはもう命令です。
最高責任者である学園長にそう言われたら、何も言えないじゃない。あ~~絶対やだ。どんな手を使ってでも断りたいけど、お父様とお母様がとても嬉しそうにしている。外堀埋められた感覚だわ。知らないうちに詰んじゃったよ~~。
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