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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
発表当日
しおりを挟む取り敢えず、学園に無事合格出来ました。パチパチ。
これで最低限、最悪な方向に進むことは避けれそうね。私という抑止力が良い方に働ければだけど。そこはこれから次第かな。まぁスタートラインは立てたからよしとするか。
後はクラス分けだけど……こればかりは運を天に任せるしかないよね。とはいえ、ゼリアス様に頼るのはズルいと思うんだよね。普通の信者ならいいけど、私はね……
「難しい顔をして。マリエール、可愛い顔が台無しだわ」
そう言いながら、私の眉間をグリグリと押しているのは、私の新しいお母様。私の入学に合わせて王都に戻って来た。
昨日ね。それも魔馬を飛ばして。マジ驚いたわ。
何でも、魔物の討伐の指揮をとってたから遅くなったらしい。本当、人って見掛けによらないとつくづく思ったわ。
だって、なんというか……テンポが普通の方とは少し違う方なんだよね。今も眉間をグリグリしてるし。普通しないでしょ。ちょっと絡み辛いけど、良い方なのは間違いないようです。お父様が心底惚れ込んでるからね。今もチラリとお父様を伺えば、やたらニコニコと微笑みながら私たちを見てるし。
「あんまりグリグリしないで下さい、お母様。赤くなります」
さすがに手を払いのけることなんて出来ないから、口で止めてもうようお願いする。
「あら、本当。少し赤くなっちゃったわね……冷やした方がいいかしら」
いやいや、ここに氷はないでしょう。そう思ったら、急に眉間が冷たくなった。
氷魔法!?
反射的に体を後ろに反らせたら、お母様の人差し指の第一関節までが白くなっていた。まるで霜のように。
無唱和で効果は小範囲。そして魔力のコントロールの上手さ。それを意図も簡単にやってのけてる。過去世から魔法をかじっていたから、その難しさは嫌でも分かる。魔物討伐の指揮を任されるのも十分納得出来たわ。
「少し赤みが取れたわよ、マリエール」
そう言いながら、お母様はにっこりと笑った。
「あっ、ありがとうございます」
「どういたしまして」
また、にっこりと微笑んだ。
そうしているうちに学園に着いた。お父様に支えられながら馬車から下りる。ここからは歩きですね。
周囲を見渡せば、私のように保護者連れの子供の姿が何組も見えた。皆、同じ方向に向かって歩いている。
「それじゃ、私たちも行きますか」
「はい……」
さすがにこの場にはいないわね。殿下は。いないのが当たり前なんだけどね。つい無意識に探してしまった自分が恥ずかしい。
少し赤い顔をしながら、両親と一緒に歩き出す。
真っ直ぐ続く一本道を歩き始めて五分。まだ着かない。広い。広過ぎるわ。かなり早めに家を出ないと授業に間に合わないわね。
そんなことを考えながら歩いていると、発表を見終えた方たちとすれ違う。興奮してるのか、少し声が大きい方たちもいた。だから自然と耳に入った。
どうやら今年の入学生の中に、Sクラスの生徒がいるらしい。
「良かったな、マリエール」
気の早いお父様がそんなことを言い出した。結構声が大きくて視線が集まる。
「何を言ってるのですか、お父様」
少し親馬鹿だよ。嬉しいけど。
「恥ずかしがらなくてもいいのよ。おめでとう。マリエール」
いや、お母様まで。掲示板まで到着してないのに。ほんと、二人とも親馬鹿だよ。力足らずだったら恥ずかしい。
人だかりが出来ているのが見えた。おそらく、そこで貼り出されているんだろう。
自然と歩調が遅くなる。ついに手前で止まってしまった。そんな私に、
「大丈夫よ。マリエール」
「そうだ。俺たちが付いている」
お母様とお父様が背中を優しく押してくれた。私はお父様とお母様の顔を下から見上げる。
二人とも、温かい笑顔で私に微笑み掛ける。この二人と親子になって良かったと、心底私は思った。
「行って来ますわ」
勇気を貰った私は歩き出す。数歩歩いた途端体が浮いた。お父様が抱き上げたのだ。
「これならよく見えるだろ」
確かによく見えるけど、抱っこは恥ずかしいわ。文句を言っても下ろしてくれないんだろうな。なら、いいかな。
私は掲示板に目をやる。
自分の名前を探すまでもなかった。だって……私の名前が一番最初にあったから。
「やったな!! マリエール!!」
「おめでとう!! マリエール!!」
お母様が抱き付いてきた。
「ありがとうございます。お父様、お母様」
嬉しくて、視界がぼやけてきた。殿下。私頑張ったよ。
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