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第二章 超ハードモードの人生を終わらせるために頑張ります
加護と使徒
しおりを挟む「死ななくていいのですか……?」
まさか、そんなことを言われる日が来るとは思わなかった。
「ああ。マリエール、お前はカインと同様、十分資格があるから大丈夫だ」
「…………」
言葉が出ない。
「これまで何度も生まれ変わり、時には力なき者を命を掛けて助けてきたであろう。そして、多種多様ある欲望に流されることはなかった。まぁ、マリエールの願いは天寿をまっとうすることだけだがな。結果的に聖職者と同じような生活をしていた訳だ。故に、十分資格がある。我の加護を受け、将来使徒となる資格がな」
「……本当に死ななくていいのですか?」
それしか言葉にならない。その声も、とてもとても小さいものだった。
「ああ。死ななくていい。我の神位はあの糞女神よりもはるかに上だ。よって、我の加護はあの糞女神の呪いなど完全に相殺出来る」
ゼリアス様の声はとても優しいものだった。その一音一句、私の心に染み渡る。
「…………死ななくていいのね。ありがとうございます」
深々と頭を下げた。下げた頭をゼリアス様は撫でる。
「我に礼を言う必要はない。己の生き方を褒めよ」
私の今までの苦労が報われた瞬間だった。
「マリエール!!!!」
急に殿下に抱き締められた。
「すまない。すまない。ほんとにごめん」
殿下が必死に謝り続ける。その声は震えていた。
もしかして……殿下泣いてるの…………?
「マリエール」
ゼリアス様が優しい声で私の名を呼ぶ。
「……ゼリアス様」
「よく頑張った。カインもだ。だから、今はゆっくりと泣くがいい」
その台詞に、私は始めて自分が泣いてることを知った。お母様が死んで以後枯れ果てた筈の涙。
それが安堵からなのか。それとも、長年の願いが叶えられたからなのか、正直分からない。両方なのか両方じゃないのかも分からない。ただ……溢れてくる涙が止まらない。
ひとしきり泣いた後、私は照れくさいなと思いながら、殿下から離れる。殿下は離したがらなかったけどね。無理矢理離れた。さすがに恥ずかしいよ。
真っ赤な目のまま、私はゼリアス様に向き合う。
「……それで、ゼリアス様。私が死ななくてすんだことには感謝しております。死後は、貴方のために働きましょう。しかし、あの糞女神をこのままにしとくのは嫌ですわ。絶対に」
なんとしてでも、この手で復讐したい。人の人生を散々弄んでくれたお礼もきちんとしたい。
「その手で復讐したいか?」
ゼリアス様の声に厳しさが混じる。
「はい」
仮にも神と呼ばれる者に刃を向けるのだ。それなりの咎めがあるでしょうね。それが何? そんなこと関係ないわ。罰がこの身に振りかかっても。
「カインと同じだな。構わん。我が認めよう。お礼がしたいのならば、糞女神の息が掛かった者を排除するのが一番得策だな」
息が掛かった者……?
「あの糞女神が何の神が知っているか?」
「確か……愛を司ってるって……」
「そうだ。愛だ。なら、どのような人間に恩恵を与えているか分かるだろ」
「…………女性。中でも女子学生……」
この年頃のお嬢さんがたは、自分の恋心をあまり隠そうとはしない。そして決まって、最後には神頼み。だから糞女神でも信仰度が維持出来るのね。底辺ながらも。
「大当たりだ」
ゼリアス様がにっこりと笑った。
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